「1バックでリスクを負った…」静岡学園はいかにして苦境を跳ねのけたのか。清水東との壮絶戦、その舞台裏を紐解く【総体予選】

2021年06月07日 安藤隆人

パスを回す静学、堅守速攻を貫く清水東。高度な拮抗が保たれて──

激闘の口火を切ったのは静岡学園のFW、持山の豪快ヘッドだった。写真:安藤隆人

 まさに激闘だった。4大会ぶりのインターハイ出場を目ざす静岡学園と、実に29年ぶりの全国大会を狙う古豪・清水東の一戦は、激しい点の取り合いとなり、勝負はPK戦で決した。

 先手を取ったのは静岡学園だった。前半8分に左FKを得ると、ゴール前に蹴り込んだボールは清水東DFに大きく弾き返される。しかし、落下地点に素早く入り込んだMF玄理吾がダイレクトでロビングを上げ、FW持山匡佑が飛び出してきた清水東GK服部孝太郎の伸ばした手より先に頭に当てて、ゴールに押し込んだ。

 これで静岡学園ペースになるかと思われたが、直後の9分、清水東が鮮やかなカウンターを繰り出した。10番でキャプテンのMF佐野健友のスルーパスにFW中山大耀が抜け出してシュート。これは静岡学園のGK生嶋鍵太郎のセーブに阻まれたが、こぼれ球を1年生MF宮野陽貴が拾ってふたたび中山へスルーパスを送り込む。これを中山が相手DFを引きつけながらスルーすると、左サイドのスペースに駆け上がってきた左ウイングバックの中澤翼が冷静に蹴り込んで、わずか1分で試合を振り出しに戻した。

 以降はボールポゼッションで上回る静岡学園に対し、5バックと3ボランチでブロックを形成した清水東の堅守が思うように侵入を許さない図式に落ち着いたが、清水東はブロックを敷きながらも、常にカウンターに突破口を見い出そうと狙い続けていたため、試合は終始緊張感に包まれた。
 
 清水東は3ボランチの両脇に位置する佐野と村井稜が、静岡学園がバックパスをする度に高く位置取り、カウンターの経由地を作り出す。さらにマイボールになった瞬間に中澤と宮野の両ウイングバックが抜群のスプリントを活かしてサイドを駆け上がり、佐野と村井と連動をしながら望月優太と中山の2トップにボールを供給する、統制の取れたカウンターを披露。38分には佐野のドリブルからのラストパスを望月が豪快にゴールに突き刺して、清水東が逆転に成功した。

 後半、「相手の固い組織的な守備に対して、もっと仕掛けていかないといけないのに前半はその回数が少なかった」と静岡学園の川口修監督は、得意のドリブルが影を潜めていたMF高橋隆大に代えて突破力のある野村海翔を投入。野村を左サイドバックに置き、左サイドバックだった荒井駿希をトップ下に持ってきた。

 後半9分には清水東に2連続で右CKを与え、その2本目から後半頭に投入されたMF佐藤祥汰郎に追加点を浴びるが、野村が左サイドからドリブルで果敢に仕掛けるようになったことで、2点のリードを奪って守りに入った清水東の綻びを徐々に生み出していった。

【インターハイ静岡決勝PHOTO】清水東 3(5PK6)3 静岡学園|壮絶なる死闘はPK戦で決着! 静岡学園が4年ぶりの夏制覇!

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