【橋本英郎】A代表にあってU-24代表になかったもの。強烈だったダブルボランチの“巧妙なファウル”

2021年06月04日 橋本英郎

パスワークの距離感に小さくない差があった

五輪本番に向けてどんな糧を得たのか。筆者・橋本は4つのポイントを挙げた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 今回は、画期的な試合が見られましたね。木曜日に行なわれた日本代表の"兄弟対決"、A代表対U-24代表(東京五輪代表候補)の一戦です。

 テレビ解説の小野伸二選手も言っていましたが、僕たちの世代が若かりし頃に実現させてほしかった! なぜならいまなお、僕たちの世代の話は話題に上がりますからね。とはいえ、その頃の自分自身はまだ大学生をしながらJリーガーをしていたので、日本代表や五輪代表なんて別次元の話でしたが──。

 余談はこのあたりにして、今回の試合の感想・分析を自分なりにまとめてみました。分析テーマは、「A代表にあって、U-24にはないもの」。この切り口で、4つのポイントを挙げさせていただきます。

①距離感
 パスワークにおいて、距離感の差を感じられた方は少なくなかったのではないでしょうか。A代表は大迫勇也選手に長いボールが入った際、南野拓実選手や鎌田大地選手などはすぐフォローに入っていましたし、近くのパス交換の際は、ボランチ、両サイドハーフが絡んで、流動的かつダイレクトのパスワークがそこかしこで見られました。

②CBからの縦パスやパスの散らし
 ここは谷口彰悟選手がとくに上手く出せていた部分だと思います。キーパーへのバックパスを含めて、前線のプレスの外し方がスムーズで、プレッシャーが掛かっていない状況で中盤の選手が前向きになれる場面が多々ありました。

 プレスが掛かっていても、①で述べたように距離感の良いところにボールを入れられる。ダイレクトプレーやプレッシャーに対して来る方向が分かっているので、キープできる状況が常に作られていました。
 
③守備時のハードワーク
 ここは、ダブルボランチが際立っていました。守田英正選手、橋本拳人選手が相手ボランチに対してかならずプレスを掛けていましたね。一方で②に繋がりますが、U-24代表のボランチコンビ、中山雄太選手と板倉滉選手が前向きで受けるシーンはほとんどありませんでした。CBからトップ下(ボランチの背後)にボールを入れられずにいたため、守田選手らがボランチにダイレクトにプレスに来ていたからです。一度守田選手らボランチの背後にボールを入れて目線を変え、そこからボールを落としてもらえたら、板倉選手や中山選手も前向きにプレーできていたのではないでしょうか。

 このボランチを潰す速さや、カウンターやトップ下の選手のドリブルに対して交わされそうになった際は、すぐにファウルで止めていました。これによってU-24代表はリズミカルな攻撃や効果的なカウンターを発動できないままでした。

 一度交わすことに成功した際は、キーパーと1対1にまで持っていけてました。その点を考えても、A代表のファウルが有効に機能していることが分かりました。

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