【短期連載】『AKB48の経済学』著者に訊く“Jリーグと日本経済”第1回「外資参入の意味とJクラブ経営の見通し」

2015年05月21日 石田英恒

外資参入は、広い意味での日本買いの一環

昨年5月に横浜はシティ・フットボール・グループとパートナーシップを締結。同グループは横浜の株式を一部取得するなど、外資とJリーグの結び付きは今後、どのように発展していくか注目だ。写真:サッカーダイジェスト

『AKB48の経済学』著者がJリーグを多角的に考察する短期集中連載。
 
 第1回は、景気回復が見込まれる日本経済とJリーグの関係性について。
 
 今年3月、マンチェスター・シティを傘下に置く「シティ・フットボール・グループ」が、日本法人「シティ・フットボール・ジャパン」を設立。同グループは、2014年5月に横浜F・マリノスの株式の一部を取得しているだけに、外資系企業でも日本法人があれば、Jクラブの経営権を持てるのがJリーグのルールであることから、横浜が外資に買収されるのでは、との憶測が飛び交った。
 
 結局、横浜側はこの噂を完全否定したが、いずれにせよ、こういった話題が出てきたのはJリーグにとっては初めてで、注目される出来事ではあった。
 
 日本経済が回復傾向にあるなか、外資参入はJリーグにどのような影響を及ぼすのか――。
 
 日本経済思想史と日本経済論を専門とし、リフレ派論客として活躍するだけでなく、AKB48などポップ&サブカルチャーにも詳しい経済学者の田中秀臣氏に話を聞いた。
 
――◆――◆――
 
――Jクラブに外資が入ってきたことについてはどう見ています? 
 
「一般的に、外国人投資家は短期で大きな利益を上げようとする傾向があります。そういう投資パターンの印象があるので、外資に対する否定的な見方があるのでしょう。
 
 ただ、短期とするとスポンサー企業にとって色々と制約も多く、一流選手の多くが海外へ渡っているJクラブへの資本参加は、投資家にとってのメリットはあまりないはずです。
 
 私は、今回の資本参加は、短期で利益を得るためのものではなく、長期投資の一環のものではないかと思っています。"Jクラブが外資に買収される"などとセンセーショナルに騒ぎ立てるようなものではないでしょう」
 
――アベノミクスによる日本の経済状況の変化が、投資家の心理に変化を与えたのでしょうか?
 
「今、アベノミクスによる外資の日本買いで、株高が演出されています。横浜の親会社、日産の株価も上がっていますし、今後、日産の企業収益がさらに上がり、株価も上がっていく可能性は高いと思われます。
 
 さらに、Jリーグ本体へのスポンサーからの協賛金や放送権料が将来的に上がり、Jリーグから横浜への分配金が増加していく可能性があります。
 
 日本に変化が生じ、日本の将来に明るい見通しが出てきたことで、株高に象徴されるような日本買いが、スポーツの世界でも始まったということだと思います。現状では、横浜の株は買いであるという判断なのかもしれません。そうであるならば、広い意味での"日本買いの一環"とも言えるでしょう」

次ページ広告収入が復活。Jクラブの経営も良化へ。

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