【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の十九「外国人記者の視点」

2015年05月21日 小宮良之

外国人だからと言って、なにからなにまでありがたがる必要はない。

04年からマジョルカで2シーズンプレーした大久保をはじめ、少なくない日本人選手がリーガ・エスパニョーラに挑戦。ただ、本当の意味でスペイン語を習得した選手はひとりもいない。写真:Getty Images

 大抵の日本人は少なからず外国人にコンプレックスを抱いているものだが、サッカーの世界ではこの傾向が顕著である。青い目や金髪で堂々とサッカーを論じられると、少々乱暴な言い分であっても、"さもありなん"と受け入れてしまう。
 
「日本はまだまだサッカー発展途上」と引け目を感じてしまうのだろう。
 
 しかし外国人だからと言って、なにからなにまでありがたがる必要はない。
 
 筆者は駆け出しだった20年近く前、『ワールドサッカーダイジェスト』の編集部に依頼され、有望なスペイン人コラムニストを捜し歩いたことがある。『マルカ』や『アス』など有力スポーツ紙の記者とも会話を交わした。スペインではTVや新聞よりもラジオ記者の質が高いと言われ、そういう記者ともコンタクトを取った。しかし一向に面白い話が出てこない。情報は持っているし、相応の人脈もあるが、視点は凡庸で表現もありふれていた。
 
 結局、筆者が選んだのは現地では無名だったヘスス・スアレスだった。スアレスの連載は人気を呼び、今も同誌で継続しており、逆輸入の形で地元でもラジオ番組のパーソナリティを務めるなど、あのジョゼップ・グアルディオラも信頼を寄せる。
 
 大事なのは個人であって、国籍や団体名は飾りでしかない。
 
 外国人は日本人選手をどうジャッジするのか? その評価にびくつき、跪いて受け入れるなどもってのほかだろう。サッカー大国の外国人だからといって、そのスカウティングが的外れなケースも少なくない。
 
 筆者はリーガ・エスパニョーラの強化部の関係者に、「日本人選手に対するスカウティングが悪いよ」としばしば指摘する。「日本人選手はなぜリーガ・エスパニョーラで大成していないのか?」と訊ねられたら、選手評価の物差しに問題があると断言している。
 
 例えば、スペイン人には先入観がある。
 
「日本人もブラジル人のように語学を習得し、順応できるだろう。文法などが違うのは分かるが、日本人は勤勉で賢い印象があるから」
 
 実際のところ、過去にスペイン1部リーグでプレーした選手で、スペイン語を習得したと言える選手はひとりもいない。さらに言えば、日本人はラテン的コミュニケーションも得意としていないのである。
 
「そんな簡単なことができないはずはないだろ!?」という偏見を、スペイン人は拭い切れない。

次ページ外国人が日本人を査定する際は、彼ら独自のフィルターを使う。

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