【セルジオ越後の天国と地獄】根拠が希薄な協会の目標設定。W杯4強入りと言われてもピンとこない

2015年05月21日 サッカーダイジェスト編集部

協会が発表したのは、公約ではなく単なる目標。代表の短期合宿にも疑問は残る。

強行日程で行なわれた日本代表の短期キャンプ。ゴールデンウィークの連戦を終えたばかりの選手たちは疲労困憊だっただろう。 写真:徳原隆元

 日本協会が5月14日に「JFAの目標2030」を発表した。
 
 それによると、日本代表がワールドカップに出場し続け、18年までにFIFAランキングでトップ20、22年までにトップ10に入り、30年のワールドカップでのベスト4に入ることが強化目標として掲げられている。
 
 でも、目標を掲げるのは誰にだってできること。その目標に辿り着くために、誰の責任のもとでどういう努力をし、どういう改革をしなければならないのかがさっぱり伝わってこないんだ。これは公約ではなく、文字どおり単なる目標っていうことだね。
 
 千葉県の幕張にJFAナショナルトレーニングセンターを建設する予定だと言うけれど、豪華なグラウンドを作りさえすれば達成できるものではない。
 
 そもそも日本協会は、05年に当時の川淵会長が発表した「JFA2005年宣言」のなかで「2015年には日本代表が世界トップ10のチームになる」という壮大な目標を掲げていた。その結果、どうだったのか。日本の現在のFIFAランキングは50位で、14年のブラジル・ワールドカップでは大惨敗。今年のアジアカップでもベスト8で敗れ去っている。
 
 05年からの10年間で、世界のトップ10入りがなぜ実現できなかったのか。その分析がしっかりとなされていないのに、「15年後にベスト4に入る」と言われても、信憑性はまったくないよ。
 
 分析できていれば、アンダー世代の日本代表が軒並みアジアで敗退するなんてことはないはずだからね。
 
「JFAの目標2030」が発表された前々日と前日の5月12日と13日には、Jリーグでプレーする選手を集めて日本代表候補のキャンプが行なわれたけど、これも疑問の残るものだった。
 
 たかだか1泊2日でなにができるんだろうか。しかも、Jリーグはゴールデンウィークの連戦をようやく終えたばかりで、選手も疲労困憊だっただろうし、クラブも本音を言えば休ませたかったに違いない。実際、キャンプ中にはFC東京の武藤が負傷したり、セレッソの山口が別メニューをこなしたりしていて、負担は軽くなかったはずだ。
 
 6月16日からロシア・ワールドカップのアジア予選がスタートする。ハリルホジッチ監督に与えられた時間は確かに多くない。でも、6月11日にはイラクとのテストマッチが用意されているし、そもそも時間がないのは、アギーレ前監督との契約を途中で打ち切らなければならなくなったから。それは日本協会の責任で、そのしわ寄せをクラブと選手が食うのは、いかがなものか。
 
 国内組だけを集めた候補キャンプは、ザッケローニ元監督の時代にも行なわれている。でも、結局試合になれば、ヨーロッパでプレーする選手たちが中心となり、しかも彼らの中には所属クラブで満足に試合に出られていない選手もいた。だから僕は、国内キャンプってどんな意味があるんだろうか、ただ予算を使うためだけにあるんじゃないのかってずっと疑問に思っていたんだ。
 
 今回、強行日程でキャンプを敢行したわけだから、6月のワールドカップ予選では、キャンプに呼んだ国内組もきっちり招集してほしいものだね。
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