アトレティコを2度目のリーガ制覇に導いた「シメオネ流」とは? 肩を並べた“伝説の名将”との共通点【現地発】

2021年05月26日 エル・パイス紙

選手は限界までそのスピリッツを体現する兵士と化す

選手たちに胴上げされ、笑顔を見せるシメオネ。(C) Getty Images

 ルイス・アラゴネスはもう1人で移動する必要はない。恰好の同行者を見つけた。ディエゴ・シメオネだ。アトレティコ・マドリーという神話の世界においてアラゴネスが20世紀を代表する偉人なら、シメオネは21世紀のそれだ。2人が同じテーブルを囲んで食事する時も、対等に話をするだけの資格を手にしたのだ。

 優勝争いにおいてラスト10試合が鍵を握るというのがルイスの持論だったが、シメオネはラスト5試合を4勝1分けで乗り切ってラ・リーガを制覇した。ルイスが「勝って、勝って、また勝つ」と勝利への執念を見せていた一方で、シメオネは「試合から試合へ」という言葉を念仏のように唱え続ける。

 ルイスが純度100%の堅守速攻にコンビネーションプレーやポゼッション的要素を加味することに成功すれば、ボール保持よりもスペースケアに傾注してきたシメオネは今シーズン、パスワークによる崩しにより比重を置く戦術への転換を図った。さらにはその一環として、ルイスが監督初期時代に芸術の域にまで機能性を高めた3バックを導入した。

【動画】優勝決定後にピッチで号泣するスアレスはこちら
 
 出場数、勝利数、タイトル獲得数など数字に表われる要素だけではない。2人の間にはもっと深遠なところでの共通点がある。アトレティコ愛、伝統を重んじる姿勢、求心力、カリスマ性、リーダーシップなどがそうだ。

 ルイスが話しを始めると、その場にいる者は体内で赤白色の血液がふつふつと湧き上がるような感覚を覚えたという。そしてその熱のこもった話しぶりに相槌を打ち、心に刻んだ。

 同様にシメオネが奮い立たせれば、選手たちは限界までそのスピリッツを体現する兵士と化す。時に1-0で守り勝つそのゲームプランに疑問を抱く者もいるかもしれない。しかしシメオネが命じれば、有無を言わせない説得力がそこにはある。こうして2011年12月の監督就任以来、ラ・リーガを2度、ヨーロッパリーグを2度、コパ・デル・レイを1度、UEFAスーパーカップを2度、スーペルコパを1度とタイトルコレクションを増やしてきた。

すべてシメオネ流を貫いて、だ。レアル・マドリーで失格の烙印を押されたマルコス・ジョレンテはアトレティコの中心選手になった。バルセロナを追われたルイス・スアレスはラ・リーガで21ゴールを叩き出してその価値を改めて示し、優勝決定時に涙を流した。ヤン・オブラクは欧州最高のゴールキーパーに成長し、心臓疾患を乗り越えてスーパーサブ的な立ち位置が定着していたアンヘル・コレアはレギュラーとしての活躍を見せた。そしてコケは9シーズンにわたってトッププレーヤーとしての地位を維持し続けている。

【PHOTO】7年ぶりにラ・リーガ制覇を果たしたアトレティコ!歴史に名を刻んだV戦士を一挙紹介!

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