【浦和】宇賀神友弥――笑顔の裏にあるタイトルへの強い欲望

2015年05月17日 河野 正

チームの牽引役としての自覚が芽生えてきた――。

優れた状況判断と質の高いクロスでゴールをお膳立て。宇賀神のハイパフォーマンスが堅陣を誇るFC東京の牙城を打ち破った。(C)SOCCER DIGEST

 G大阪(9節)、FC東京(11節)と、埼玉スタジアムで2試合続いた"首位対2位"という上位決戦に連勝。浦和が開幕からの無敗記録を11試合に伸ばし、首位の座を堅持した。

【J1 PHOTOハイライト】浦和 4-1 FC東京

 FC東京は浦和と対戦するまで、広島に次いで少ない「失点8」の堅陣を誇っていた。その相手から、浦和は前節の仙台戦に続き、2試合連続の4得点を奪取。どのゴールも美しく、また奪った時間帯が3点目まで5分、42分、47分と理想的だった。
 
 しかも、1点を取られて3-1になったわずか2分後にダメ押しの4点目を決めたのだから、FC東京を意気消沈させる得点ばかりであった。
 
 4得点のうち、3得点がお手本どおりに外から崩したもので、特に1、2点目をお膳立てした左ウイングバックの宇賀神友弥のクロスは出色のラストパスだった。
 
 先制点は、左サイドで興梠慎三からボールを預かると、GKとDFの間に低くて鋭いクロスを配球。そこに李忠成が飛び込み、左足でなでるように合わせてゴールに流した。
 
「チュン君(李)からはGKと守備陣の間に入れてほしいと頼まれています。チュン君は今季まだゴールがなかったから、初得点に結び付いて僕も嬉しい」
 
 2点目も左サイドで興梠からパスを受けたのだが、今度はファーサイドにロブ気味のクロスを送ると、関根貴大が右足ボレーで叩き込んだ。
 
「シュートも考えましたが、マークが付いてきたのでクロスに切り替えた。ニアに3人いたけど、(マークの手薄な)ファーに入ってきた関根が見えたので選択しました」
 
 浦和ユースから流通経済大を経由して加入した10年、宇賀神は鹿島との開幕戦で左SBとして先発。ゴール前の味方のポジショニング、敵の位置取りなどを素早く判断しながら、球筋を使い分けてクロスを供給していた。
 
 右利きだが、左足で精度の高いパスを繰り出すだけでなく、中央に切れ込んで右足で強烈なシュートも放つ。今季は湘南との開幕戦でさっそく決勝点を挙げ、アシスト数もこの試合で4に伸ばした。
 
 好調なチーム状態に加え、自身の出来も上々とあって「試合も練習も楽しくて仕方ない」と笑顔が絶えないが、タイトルへの想いを話し始めると顔つきが変わった。
 
「昨年、手に掴みかけた優勝を逃したことで、今季はなにをすべきかを自覚しています。一人ひとりが責任感を持って戦わないといけない。第1ステージは優勝に近い位置にいますが、僕は目の前の試合に勝つことしか考えていない。あくまでも目標は年間王者になることですから」
 
 27歳の中堅に、チームを引っ張っていこうとする強い信念が芽生えてきた。

取材・文:河野 正
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