【岩本輝雄のバルサ徹底分析】ネイマールの2ゴールに凝縮された個々の高いクオリティ

2015年05月15日 岩本輝雄

スペースを有効活用するため、メッシはあえてその場に止まる。

ゴールやアシストこそなかったメッシだが、卓越したポジショニングでチャンスを確実に広げた。(C) Getty Images

 チャンピオンズ・リーグ準決勝のセカンドレグ、バイエルン対バルセロナの一戦を現地取材してきた。
 
 結果は3-2でバイエルンが勝利したけど、ファーストレグのホームで3-0と勝利していたバルサがトータルスコア5-3でファイナルに進出。改めてバルサの充実した戦いぶりが印象付けられた準決勝だった。
 
 敵地でのバイエルン戦は、ファーストレグで大きなアドバンテージを得ているし、アウェーゴールも奪ったこともあって、試合を通じて、少なからず緩慢な部分も見受けられた。それでも、ここぞという時の決定力はさすがで、とりわけ前半に奪ったネイマールのふたつのゴールは、個々の高いクオリティが凝縮されていた。
 
 まずは15分の1点目。メッシのスルーパスに抜け出したスアレスが、逆サイドに丁寧なクロスを供給し、ネイマールが確実に押し込む。
 
 特筆すべきは、ミドルゾーンでメッシがボールを足下に収めた瞬間、すでにスアレスが走り出していること。バイエルンの守備陣は完全に後手に回って、ネイマールを捕まえ切れず。スアレスは常にオフサイドラインのギリギリを狙っている選手で、それが奏功したゴールだった。
 
 スアレスにスルーパスを通したメッシは、自分にパスが届く前段階でネイマールがゴールに向かってサイドからダイアゴナルに走り出していたけど、そういうシチュエーションではその場に止まるケースが多い。
 
 ネイマールやスアレスが縦に行けば当然、相手のディフェンスラインも下がる。そこでできたバイタルエリア近くのスペースを有効活用するために、メッシ自身はあえてゴール前に行かない。
 
 フリーになるための彼のポジショニングは抜群だったし、前を向いてボールを持ったメッシにDFが気を取られた瞬間、すかさずその背後を取ったスアレスの動き出しもまた素晴らしかった。
 
 29分の2点目は、バイエルン守備陣の致命的なミスを突いた形から。自陣からのフィードをセンターサークル付近でメッシが受けようとした時、メッシにマークがついているにもかかわらず、スアレスのマークについていたバイエルンのDFは前に出てしまった。
 
 結局、メッシが頭ですらしたボールをカットできず、スアレスはまったくのフリーの状態でボールを受けることができた。
 
 スアレスは自分のところに来たボールをそのまま流すようにして前を向く。その際のファーストタッチが絶妙だった。右太ももでボールを大きく前に出す。ドリブルが大きくなったように見えるかもしれないけど、もちろん意図的なプレーだったに違いない。
 
 身体から離れたボールを追いかけるようにトップスピードで走り出すことで、追いかけるDFを振り切ることに成功した。
 
 そしてエリア内に侵入するかしないかのタイミングで、逆サイドのネイマールにパス。胸トラップで確実にコントロールしたネイマールは、一度バウンドしたボールの落ち際を右足で思い切り叩く。
 
 ニアを正確に射抜いた精度の高さはもちろん、GKの手前でわざと跳ねさせてキャッチしにくくさせるシュート技術には唸らされた。

次ページ連動した守備で重要な働きを示すインサイドハーフのふたり。

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