ユース監督となった柳沢敦が求める“鹿島のアイデンティティ”。そのストライカー育成のアプローチとは?

2021年05月12日 竹中玲央奈

鹿島らしい“闘う”部分は求める

鹿島ユースの柳沢監督。今季から同ユースの指揮を執ることとなった。写真:竹中玲央奈

 日本サッカー史に名を刻んだ往年の名選手が続々と育成年代の現場に集まってきている。鹿島アントラーズユースの監督を務める柳沢敦もそのひとりだ。2019年に同ユースのコーチとして育成年代の現場に入り、今シーズンより監督の座に就いた。

 言わずもがな日本を代表するFWで、二度のワールドカップ(02、06年)を経験しJ1歴代1位タイの17年連続得点記録という輝かしい実績を持つ。多くのファン・サポーターが洗練された動き出しからゴールを量産する姿に魅せられたはずだ。一方で、ストライカー・柳沢敦が育てる選手や、その指導論について強く関心を持つサッカーファンもまた多くいるだろう。かくいう筆者もそのひとりである。

 柳沢監督が現場でいかなる指導を行なっているのか。実情を知るべく、筆者は5月5日に行なわれたJユースリーグ・川崎U-18戦に足を運んだ。結果としては、3-5で鹿島が敗れる形となった。満17歳以下の選手を中心に行なわれるこの大会において、鹿島ユースは直近まで中学生だった1年生を主体に、さらには現役の中学3年生も交えて臨んでいた。対する川崎は高校2年生主体で、"年長"相手に圧倒されたり、あっさりとやられたりする場面も多かった。言い方を変えれば"鹿島らしくない"ものだ。
 
「あってはならないミスもあったけど、ゲーム全体の中で怖れずにやって出てしまったミスは特に問題には感じていないです」 
 年齢と経験値の差から生まれた結果に対して、柳沢監督はそこまでシビアに捉えていなようだったが、続けて語ったこの言葉が印象的だった。

「自分たちがボールを奪われてから奪い返すまでの速さに課題はある。やっぱり、今まで自分が鹿島の一員として感じてきたことを伝えていくのが大事だと思いますし、"闘う"ところや球際や組織力、勝ちにこだわる部分。そういうところはユースでも変わらず求めていきたいと思います。メンタル的なところもですね」

 鹿島の黄金期を知る者らしい指摘であり、脈々と受け継がれている常勝軍団のアイデンティティはしっかりと受け継がれていると感じたものである。

 全体の指導方針としては上述した通りだが、やはり気になるのは彼と同ポジションの選手に向けられる目線や声掛けだ。

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