【CLポイント解説】“3人”が牽引したバルサと“3人”の不在に泣いたバイエルン

2015年05月13日 遠藤孝輔

3トップに不測の事態さえ起きなければバルサに死角はない。

1)輝いた世界最強の3トップ
 
 第1レグを0-3で落とし、本拠地アリアンツ・アレーナでの奇跡の逆転を狙ったバイエルンの前に立ちはだかったのは、第1レグ同様、バルセロナが誇る世界最強の3トップだった。
 
 1点ビハインドで迎えた15分、バイタルエリア手前で前を向いたメッシが輝く。DFライン裏に飛び出すスアレスを目がけて、糸を引くようなスルーパスを供給。GKノイアーとの1対1を迎える決定機を作り出し、最後はスアレスからの横パスを受けたネイマールの同点弾を演出してみせた。
 
 この時点でバイエルンが勝ち進むには4ゴールが必要に。しかし、バルサの3トップは攻勢の手を緩めなかった。
 
 29分、センターサークル内で後方からの浮き球をメッシが頭で後ろに逸らすと、またしてもスアレスが素早く反応。一気にエリア内まで侵攻したこのウルグアイ代表からラストパスを受けたネイマールが、豪快にニアサイドをぶち抜いた。
 
2)窺えたコンディションの良さ
 
 特筆に値するのは、この3人の働きがゴールシーンだけに集約されなかった点だ。相手がボールを保持していれば、サボらずにプレッシャーをかけるか縦パスのコースを遮断するなど、守備でも献身的な姿勢を見せていた。
 
 2アシストを決めたスアレスはハーフタイムで御役御免となったが、メッシもネイマールも、タイムアップの笛が鳴るまでボール奪取に奔走。その労を惜しまないプレーからは、心身両面におけるコンディションの良さが窺えた。
 
 この3トップに不測の事態が起きないかぎり、3冠達成を目指すバルサに大きな不安はないだろう。
 
3)流れるようなパス交換は…
 
 主導権を握るため、高めに設定したDFラインの裏を突かれるかたちで2失点したバイエルンは結局、カウンターに弱いという以前からの課題を片付けられなかった。
 
 しかも、自慢のパスワークもいまひとつ。相手の執拗なプレッシングに苦しみ、流れるようなパス交換による崩しを実践できなかった。7分、59分、70分に奪った3ゴールは、いずれも個の高い能力でもぎ取ったものだ。
 
 1点目はCKにフリーで合わせたベナティアが得意のヘディングを叩き込み、2点目は華麗なフェイントでマスチェラーノをかわしたレバンドフスキが、そして3点目はシュバインシュタイガーの完璧な落としを受けたミュラーが正確なシュートを突き刺した。
 
4)悔やまれる"3人"の不在
 
 バイエルンにとって悔やまれるのは、言わずもがな、リベリ、ロッベン、アラバを怪我で欠いていた事実だ。非凡なキープ力と縦への推進力を誇る3人のうち1人でも健在なら、ボールポゼッションはもちろん、2試合を通じて迫力を欠いたカウンターやサイドアタックの質は高まっていたはずだ。
 
 メッシとネイマールの両ウイングだけでなく、D・アウベスとジョルディの両SBに伸び伸びと攻撃させてしまったのも、リベリとロッベンの不在が響き、敵に守備面の不安をさほど抱かせることができなかったからだ。
 
5)最低限のノルマは果たすも
 
 主力中の主力である3人に加え、CBバドシュトゥバーも欠くなか、ホームで勝利を収めるという最低限のノルマを果たした印象のグアルディオラ監督は、試合後に「わたしは幸せだ。胸を張ってスタジアムを後にできる」と、最後まで勝負を捨てずに戦った選手たちを称えていた。
 
 しかし、2シーズン連続となるCL準決勝での"完敗"に悔しさを募らせているだろう。昨シーズンはレアル・マドリーにカウンターへの耐性の低さを露わにされ、今シーズンはバルサにパスワークによる崩しを封じられた。
 
 バイエルンでの契約最終年となる来シーズン、チームをいかに進化させるか。今から興味が尽きない。
 
文:遠藤孝輔
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事