「悪夢の帰還」をペップはどう受け止めていたのか 【バイエルン番記者】

2015年05月11日 パトリック・シュトラッサー

ペップが得たものは、わずかばかりの同情だった。

悪夢となってしまったカンプ・ノウ帰還を、ペップはどう受け止めていたのか。 (C) Getty Images

 スペインのテレビでは一晩中、バルセロナ・ショーが続いた。リオネル・メッシという"驚嘆すべき現象"が何度も映し出されて――。
 
 チャンピオンズ・リーグ準決勝・第1レグ、バイエルンから奪ったゴールが何度も何度もリピートされる。メッシ、メッシ、ネイマール。ほとんど全てのチャンネルでそれは繰り返された。
 
 カタルーニャのテレビ局は、この夜もっとも大きな屈辱を受けたひとり、ペップ・グアルディオラに焦点を当てていた。故郷に帰還した"失われた息子"が得たものは、わずかばかりの同情でしかなかった。
 
 0-3の完敗……。14のタイトルを集めたバルサでの4年間で形作られたペップのオーラと名声は、その絶対的な輝きを失ってしまった。
 
 この敗北は、ペップにとってもっとも苦い敗北だろう。レアル・マドリーに0-4で敗れた昨シーズンのCL準決勝(第2レグ)よりも衝撃的で、その痛みはより凄烈に違いない。ペップの帰還は悪夢となった。
 
 21時間と短いバルセロナ滞在中、ペップはバイエルンという新しいファミリーを想い出の場所に案内した。練習に向かう前に毎日、子供たちを送り届けた学校は、カンプ・ノウから5分ほどのところにある。
 
 カンプ・ノウでは、4年間を過ごした監督室を見せた。壁を飾っていたのは、戴冠シーンを収めたペップの栄光の写真だ。
 
 しかし、それらはもう過去のものだ。ペップは敗戦後、小さな声で言った。
「選手のことを誇りに思う。メッシというタレントが違いを作った。我々は最後にバランスを失った。バルサはスーパーなチームで、我々にはいくつか問題があった」
 その通りだろう。
 
「3点ともカウンターでやられた。痛恨だ」
 そう振り返ったのはキャプテンのフィリップ・ラームだ。
「ずっとオープンな展開が続いていた。それなのに、自分たちがミスを犯し、失点を招いてしまった」
 
 メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスという驚異の3トップに、メハディ・ベナティア、ジェローム・ボアテング、ラフィーニャという3バックで挑んだペップは、大胆なそのアイデアを開始からわずか15分ほどで捨てざるを得なかった。
 
 ZDF(ドイツ第2公共放送)で解説していたバイエルンOBで元ドイツ代表のオリバー・カーンが指摘したように、「3バックは機能しなかった」からだ。「後方で1対1をさせるのは、かなり冒険的」だった。
 
 ファン・ベルナトを左SBに下げ、ラフィーニャを右SBに回して4バックとしてから、守備は安定したものの、バイエルンは踏ん張りきれなかった。
 
「第2レグを複雑にしてしまった」
 ペップはそう言って、故郷をふたたび後にした……。
 
【記者】
Patrick STRASSER|Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー/アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。
【翻訳】
円賀貴子
 
 
 
 
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