【川崎】強力なライバルを退ける貫録ぶり。名古屋との連戦で感じた強いメッセージ

2021年05月05日 本田健介(サッカーダイジェスト)

異例の上位対決に連勝

ジェジエウ(写真左)や山根(写真中央)のゴールで2位の名古屋に連勝。無敗を貫く。(C)SOCCER DIGEST

[J1第12節]川崎3-2名古屋/5月4日/等々力 

 川崎の強さを改めて象徴する"2連戦"だった。

 ACLのスケジュールの都合上、リーグ戦では異例となった1位と2位の連戦での直接対決。先立って4月29日に開催された22節のアウェーでのゲームに4-0と快勝した川崎は、中4日で迎えたホームでのリターンマッチ(12節)にも3-2で勝利。堅守が売りのライバルに2試合合計で7ゴールを奪い、勝点9差を付けることに成功している。

 ホームでの"第2戦"は59分までに相手のオウンゴールを含め3-0と大きくリードしながら、終盤に2点を返されるなどゲームの締め方に課題を残した。

 それでも従来の4-2-3-1からミラーゲームを挑むかのように4-3-3にシステムを変えてきた名古屋に対し、試合数日前に谷口彰悟が「相手を見ながらできるチーム」と今の川崎の強みを語っていたように、柔軟に対応。強化するセットプレーを活かして先制点を奪うしたたかさも見せた。
 
 崩しの質、ボールを回すクオリティ、攻守の切り替えの速さ、勝負どころを抑える感覚、相手の出方に応じて対応する臨機応変さ、どこを取っても今の川崎のレベルはリーグで頭ひとつ抜けている。

 14試合を終えて無敗(12勝2分、37得点・10失点)。ここまで結果とパフォーマンスの質を伴ったチームはJリーグの歴史でも稀有であるのだろう。

 では数々の記録を更新してリーグを制した昨季を含めて、強さの要因はどこにあるのか。それはコツコツと高めてきた技術力、ブレることのない"魅せる"というスタイルの追求を背景にしつつ、向上心を持ち前に進み続けるメンタリティにあるように映る。

 鬼木達監督が常々、語っているのは「Jリーグを引っ張りたい」との想い。常にベクトルは自らに向け、一歩一歩、進化を図る。だからこそチームは一喜一憂することが少なく、どんな時でも手を抜かず、強くなるために課題に取り組み続ける。それは普段のトレーニングの様子からも窺え、ピッチで表現され続けている。

 その意味で、川崎が貫禄を示した名古屋との連戦には、コロナ禍においても改めて力強いメッセージが含まれていたように思える。

 周囲に捉われず、自分にベクトルを向け、一つひとつ向上心を持って取り組めば、成果を得られる――。

 今後も川崎はリーグのトップを走り続けるだろう。その姿、選手たちの奮闘からは、サッカーだけでなく、人生の大事なことも教わるように映る。

 ひとつのクラブとして模範となれる姿勢。彼らから学べることはまだ多くありそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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