なぜインテルはユーベの10連覇を阻止できたのか? 11年ぶりスクデットの立役者と王者の“誤算”

2021年05月04日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

ビハインドを背負った状況から16ポイントを獲得

コンテ監督(右端)の下、勝負強さを見せたインテル。(C)Getty Images

 9年も続いた王朝を倒すには、様々な歯車がかみ合わなければならない。

 インテルがユベントスから覇権を奪還し、11年ぶりのスクデット獲得を成し遂げる上で最も大きかったのは、指揮官アントニオ・コンテの存在だ。その強烈なリーダーシップに導かれ、優勝経験の少ない選手たちが成熟し、勝者のメンタリティーを身につけていった。

 ただ、コンテ体制2年目の序盤は、決して順風満帆ではなかった。開幕8試合で首位ミランに5ポイント差の5位。何より、13失点と守備の脆さが目立った。2点ビハインドから4得点で逆転勝利した8節トリノ戦では、試合後にロメル・ルカクが「偉大なチームじゃない」と苦言を呈したほどだ。

 その翌節、サッスオーロに3-0で勝利した一戦が、ひとつのターニングポイントになった。ハイプレスからのスペクタクルな攻撃サッカーを目指す方針を変更。従来のカウンターで実利を取るスタイルに回帰し、アイデンティティーを取り戻した。ボール保持率5割を切った試合で13勝は、リーグ最多の数字だ。

 チャンピオンズ・リーグ(CL)でまさかのグループステージ敗退に終わったことも、リーグ戦に集中できるという点で逆に奏功した。さらに、1月のユーベ戦では昨シーズンにダブルを食らった王者に2-0と快勝。自信を深め、後半戦開始から怒涛の11連勝と驚異的な安定ぶりを発揮した。

 それだけ連勝するには、精神的な強さが欠かせない。今シーズンのインテルはビハインドを背負った状況から16ポイントを獲得(リーグ最多)。74得点中51得点は後半に決めている。8節終了時で13だった失点は、その後の26試合で16失点のみ。インテルの選手たちはソリッドになった。

【PHOTO】11年ぶりにスクデットを獲得したインテル!歴史に名を刻んだV戦士を一挙紹介!
 絶え間なく貢献してきた大黒柱のルカク、そして飛躍的成長を遂げたニコロ・バレッラは、その最たる例だろう。リーグ2位の21ゴールという得点力だけでなく、ルカクは前線の基点として文字通りチームの支柱だった。バレッラはフィールドプレーヤー最長の出場時間がコンテの信頼を物語る。

 さらに、適正位置が見つからず、冬に放出候補だったクリスティアン・エリクセンも、コッパ・イタリアのミラノ・ダービーで決勝FKを決めたのを境に変貌。マルセロ・ブロゾビッチの機能不全時にチームが停滞し、「プランB」の必要性が絶えず囁かれていたインテルにとっては、攻守両面での貢献度を高めていったイバン・ペリシッチとともに"ボーナス"だった。

 また、ピッチ外でのサポートが報じられるアンドレア・ラノッキア、アレクサンダル・コラロフなど、目立たないが縁の下の力持ち的ベテランの存在も大きかったと言われる。チームの団結ぶりは、終盤戦の得点時や試合後の雰囲気からもうかがえた。

【PHOTO】現地番記者が選ぶ「過去20年のインテル・レジェンドTOP10」を厳選ショットで振り返り!

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