首位攻防戦でまさかの「0-4」大敗はなぜ起きたのか? リーグ随一の堅守を誇る名古屋も川崎の前には…

2021年04月30日 今井雄一朗

「しっかり守って勝つという気持ちに少し、先制点というのは重くのしかかった」

「先制点が重くのしかかってしまった」と語った柿谷。序盤の3失点を巻き返すべく攻守に奔走したが…。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)

 指揮官が試合当日に"欠場"となったから――。そんな理由では説明がつかないほどの大敗に、名古屋の面々は悔しさをかみ殺した。12試合でわずか3失点。うち1点は開幕戦のオウンゴールで、2点はそれまでで唯一の敗戦だった鳥栖戦で喫したものだった。堅守という言葉の権化のような存在が4失点、しかも開始から23分までに3失点しているのだから、目も耳も疑いたくなる。しかし事実として、川崎は4得点・無失点で勝利し、名古屋は4失点・無得点で"6ポイント"を落とした。

 失点に対するナイーブさは、件の鳥栖戦で免疫がついたかと思っていたが、足りなかったようだ。立ち上がりのプレスをかわされ、引いて守ったところを崩された二重のショックもそこにはあったかもしれない。柿谷曜一朗は「自分たちがしっかり守って勝つという気持ちに少し、先制点というのは重くのしかかった」と言う。出鼻をくじかれ、試合展開としても押し込まれている。畳みかける川崎の強さはもはやJリーグの一般常識で、名古屋がいくら跳ね返してもすぐさま展開は川崎の攻撃に変わり、名古屋は受動的に守らされるままに失点を重ねた。
 

 サイドからのチャンスメイクに中央でのフィニッシュワークを許した旗手玲央の得点も、二次攻撃を逆サイドに振られてのシンプルなダミアンのヘディングシュートも、とかく名古屋は後手に回ったのが失策だった。3失点目はコーナーキックからだが、ニアでジョアン・シミッチが競り、中央でダミアンを見失ったのは純粋にDFのミスだ。3点もあれば川崎は前半はテンションを保ち、後半はコントロールしてくる。代行を務めた名古屋のブルーノコーチは30分という早い時間帯での交代策に踏み切り、4-3-3で中盤を厚くしての対応に手応えを感じていたが、相手がすでに十分な"蓄え"を得ていることを思えば、反撃できて当然のところは否めない。

 それでも後半最初の決定機を柿谷が決めていれば、と惜しむ心もあるが、GKチョン・ソンリョンには想定されていた名古屋の攻撃の一手として対応している雰囲気があった。ビッグセーブだが、それまでにも、その後にもチョン・ソンリョンは高い位置でのディフェンスを何度も見せている。つまり川崎が後手に回った瞬間は、高速カウンターであってすらなかったということだ。上手く守られた名古屋はもう数度のチャンスも逃し、逆に川崎の途中出場選手に追加点を沈められた。遠野大弥のシュートは見事だったが、そこに至る流れは前がかった後のエアポケットのごとき隙を突かれた感覚が拭えない。
 

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