前半は完璧に近い出来。鳥栖がFC東京戦で示した“チームワークの素晴らしさと組織力の美しさ”

2021年04月24日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

最大のインパクトを残したのは…

左サイドで躍動。中野(47番)の技術とポジショニングは光っていた。写真:サッカーダイジェスト

 味の素スタジアムに乗り込んでの一戦は、2-1と勝利。昨季のリーグ戦で連勝しているFC東京に"相性の良さ"を見せつけた格好だが、鳥栖の勝因は当然ながらそれだけではない。

 勝因のひとつは、前半の試合運び。局面に応じて3-5-2や4-4-2に変わる可変システムで相手のマークをずらし、中盤の小屋松、樋口、仙頭、松岡、DFの中の伸らが小気味いいパスワークで巧みにスペースを突く。そうして主導権を握り、首尾よく2ゴールを奪うあたりに今季の調子の良さが窺えた。

 ひとつのポジションに捉われないサッカーは見応え十分で、前半に限れば完璧に近い出来だった。後半に入ってトーンダウンし、FC東京に押し込まれる時間帯もあったが、この日の鳥栖のパフォーマンスは試合を通して見ても評価に値するものだった。

 目を引いたひとりが、左サイドにいた中野伸だ。快足の永井にプレスされてもひらりとかわす冷静さに加え、ぶれない足の技術も素晴らしく、さらに同サイドの小屋松とのコンビネーションで相手陣内へと攻め込むアグレッシブさも光った。敵のマークをずらすきっかけを作っていた点で、このDFの貢献度は高かった。
 
 ただ、最大のインパクトを残したのは樋口だ。豊富な運動量で中盤を支えつつ、18分に芸術的なクロスで酒井のヘッド弾をお膳立てすると、34分には単独突破から目の覚めるようなミドルで追加点と全得点に絡む活躍。劣勢を強いられた後半も丹念にピンチの芽を摘むなど、攻守両面で大きな働きをしたのだ。

 彼らがこのように輝けたのも、チームの基盤がしっかりしているからだろう。前半に限ればポジションチェンジもスムーズで、パスの出し手と受け手の呼吸もかなり合っていた。組織力でFC東京を上回った結果が前半の2-0というスコアであり、それはまたサッカーが団体スポーツであることを証明するものでもあった。

 おそらく選手個々の能力だけで比較すれば、FC東京のほうが上だろう。しかし、サッカーはあくまでチーム競技。この日、鳥栖が示したのはチームワークの素晴らしさであり、組織力の美しさだ。

 少なくとも鳥栖は勝者に相応しいサッカーをしていた。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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