【CLポイント解説】構想がハマったユーベ、誤算と不運に泣いたマドリー

2015年05月06日 片野道郎

ストゥラーロとS・ラモスの起用の明暗。

1)立ち上がりから一気呵成に押し込んだ先制点
 
 ユベントスのアッレグリ監督は、大方の予想を裏切って左インサイドハーフに若手のストゥラーロを抜擢、ヴィダルをトップ下に起用する4-3-1-2の布陣をピッチに送った。
 
 ストゥラーロの持ち味は攻守両局面で発揮されるダイナミズム。テクニカルなペレイラをトップ下に置き、ヴィダルを中盤で起用する布陣(ほとんどの予想がこれだった)と比べて、プレスの圧力を高めると同時に、サイドのスペースをより厚くケアすることが狙いだった。
 
 ユベントスが立ち上がりからアグレッシブに前に出て主導権を握り、開始わずか9分に先制ゴールを奪うという理想的な展開に持ち込むことができた一因は、この起用が当たったことにあった。
 
 ストゥラーロは鋭い出足で対面のS・ラモス(中盤で起用された)にプレッシャーをかけて再三ミスを誘い、マドリーのポゼッションを分断した。
 
 マドリーは、中盤から前で最もテクニックとパスセンスが劣るS・ラモスのところでリズムが崩されるためポゼッションが安定せず、ユベントスのプレスの前に後手に回るようになる。
 
 ユベントスの先制点はそうした流れの中から生まれた。
 
 1分、3分、7分と相手のミスや速攻から立て続けにシュートを放ち、マドリーの守備が受け身になったところを見逃さずポゼッションで押し込むと、テベスが素晴らしい走り込みでDFラインのギャップを衝いてマルキージオのスルーパスを引き出してシュート。GKカシージャスが弾いたこぼれ球に詰めたモラタが難なくタップインした。
 
2)サイドバックの攻撃参加がユベントス攻略の鍵
 
 ベンゼマ、モドリッチを故障で欠いたマドリーのアンチェロッティ監督は、こちらも大方の予想を裏切って、エルナンデスをCFに起用した4−3−3ではなく、前線をベイル、C・ロナウドの2トップとし、S・ラモスを中盤に起用してクロースと2ボランチを組ませた4−4−2の布陣をピッチに送った。
 
 アウェーということもあり中盤の守備を安定させること、サイドバックとサイドハーフの「縦のペア」によるコンビネーションで数的優位を作り出して、4−3−1−2というシステム上薄くなるユベントスのサイドを攻略することが、おそらくその狙いだった。
 
 立ち上がりは、S・ラモスの中盤起用が裏目に出て押し込まれる格好となったが、20分を過ぎてユベントスのプレッシャーも一段落すると、テクニックの優位を生かしてポゼッションで押し込む場面が多くなった。
 
 相手のプレスを外してリトリートさせ、ボール支配を確立できれば、個のクオリティを活かして攻勢に出る土台ができあがる。
 
 27分、粘り強いポゼッションでユベントスを自陣に押し込め左右に揺さぶると、攻め上がったカルバハルとのコンビネーションで右サイドを縦に抜け出したハメスのクロスを、中央にフリーで走り込んだC・ロナウドが易々と頭で押し込み同点に追いついた。
 
 この場面では、右サイドのコンビネーションにハメス、カルバハル、そして前線から引いてきたC・ロナウドが絡んだため、それに釣り出されたキエッリーニが最終ライン中央に穴を空け、素早く踵を返してその穴に入り込んだC・ロナウドがフリーになった格好。狙い通りの形からサイドを崩しての同点ゴールだった。
 
 マドリーはさらに41分にも、今度は左サイドでマルセロとイスコが2対1の数的優位を作り、縦に抜け出したイスコのクロスにハメスがフリーで合わせるという決定的なチャンスを作り出している。これがクロスバーに阻まれたのは不運というしかなかった。

次ページ予想以上に大きく響いたベンゼマとモドリッチの欠場。

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