簡単には負けない湘南、ここ5試合で1失点の堅守! 劇的な守備力向上の陰に元日本代表の山口智コーチの存在

2021年04月19日 佐藤亮太

決定力は課題だが失点は直近5試合でわずか1

今季から湘南のコーチを務める山口智氏。元日本代表DFが今季の堅守を支える。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 今季の湘南ベルマーレはそう簡単に負けない。

 リーグ直近5試合1勝4分。得点数は2と決定力は課題だが、失点はわずか1。

 C大阪(0-0)、横浜F・マリノス(1-1)、名古屋(0-0)、広島(1-0)、神戸(0-0)と上位チームとの対戦が続いた。

 その試合は豪雨あり。同点弾あり。後半、10人で戦えば、虎の子の1点で勝ち切り、予測不能の新外国籍選手との対峙など、ひりつくゲームばかりだった。

 堅守にはいくつか理由がある。まずは前線からのプレス。目下リーグ戦全試合先発出場FW大橋祐紀の献身的なプレスが光る。これに連動するように中盤、最終ラインにも効率よくプレスがかかるようになった。

 またここ数試合アンカーで起用されるMF田中聡の粘着質なプレスは何度となくチームを救った。

 さらにGK谷晃生の果敢なセービングも。特にハイボールの処理と1対1の強さを見せている。

 こうした守りができるのは舘幸希・石原広教・大野和成(田中聡)、この3バックのユニットが昨季の終盤から変わらないのも大きい。

 舘は「隣の広教や(右MF岡本)拓也くんと あうんの呼吸というか、言わなくても分かる部分がある。自分の背後を任せられる関係作りができている」と試行錯誤で練られた連係が活きている。

 堅守の要因を浮嶋敏監督は「守備戦術を理解し、個人戦術では球際、身体を張るプレーがしっかりやってくれていることがゼロにつながっている」と分析。これまでの積み重ねが功を奏している。

 そのなかで忘れてはいけない存在がいる。山口智コーチだ。

 山口コーチはガンバ大阪、ジェフ千葉、京都サンガF.C.で活躍。J通算581試合出場51得点。日本代表にも選出。自分に厳しく、他人にも厳しい人柄でチームメイトに慕われた人格者だ。

 引退後は2016年にG大阪の強化担当に就任すると、17年にG大阪U-23ヘッドコーチ、18、19年G大阪トップチームコーチ。昨季はG大阪トップチームヘッドコーチを務め、今季から湘南でトップチームのコーチとなった。

 守備のスペシャリストの招聘に坂本紘司SDは「選手としての経験、コーチになってからも含め、我々が見えていない世界を彼は見えているかもしれない。そうしたものを還元してほしい。選手にしても彼の言葉に説得力がある」と経緯を語った。その慧眼が実りつつある。
 

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