【名古屋】なぜ無敗は途切れたのか? 鳥栖に気付かされたリードを奪う大切さと試合運びの重要性

2021年04月19日 今井雄一朗

「どうしてもオープンな展開というものになってしまっていた」

「無失点記録がストップした事より、勝てなかったことが悔しい」と語った中谷。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ10節]名古屋1-2鳥栖/4月18日(日)/豊田スタジアム

 名古屋グランパスがそうであるように、サガン鳥栖もまたいくつもの策を張り巡らせていた。戦術に長けた両指揮官が想定したのはおそらくそれぞれの持ち味を最大限に発揮してくる白熱の攻防。しかし鳥栖がそこに罠を張ったことで、名古屋の無敗は10試合(前倒し開催の19節・広島戦を含む)で途絶えることになった。

 記録というのは破られる時にはあっけないもので、しかもかなり鮮やかな形でその区切りがつけられた。1-2というスコアは接戦ながら、10試合でオウンゴールひとつしかなかった名古屋にとっては複数失点というだけで大ごとだ。その数字が示す通り、名古屋は実に名古屋らしくなく、鳥栖に勝点3をかっさらわれた。

 ことごとく歯車が狂い続けた90分間だった。

 布陣を4-4-2に組み替えた鳥栖が、酒井宣福を起点にシンプルな試合展開を望んできたこと。金明輝監督もポイントの一つとして挙げていた「ダイレクトプレー」が、開始6分で実ったこと。このふたつの事象はがっちりと絡み合っており、堅守を誇る名古屋のディフェンスラインに後手を踏ませたのは間違いなく陣形を含めた鳥栖の"奇襲"であり、ニアで難易度の高いヘディングシュートを流し込んだ林大地をほぼフリーにしてしまったところまでが、ひとつのパッケージとしての鳥栖の成功だった。
 
 10試合もリードを奪われず、奪ってがっちり守ってきた名古屋の選手たちにはそれが見えない重圧となっていたようで、「どうしても攻撃が速くなっていたし、守備も前から行っていたので、どうしてもオープンな展開というものになってしまっていた」と中谷進之介は振り返る。

 フィッカデンティ監督は否定したが、それは選手を慮ってのことだろう。稲垣祥もまた、「一回自分たちらしく、一度重心を低くして、そこから出ていくということを選択肢として持てていればなとは今は思いますけど」と、試合後の冷静な頭で試合中の"判断ミス"を悔やんだ。

 酒井のポストプレーとフォアチェックはこの日のピッチでは強力極まりなく、CBへの信頼もあったのだろうが、周囲のフォローが足りなかったかもしれない。しかし失点を取り返すためにも、相手の良さを出させないためにも、彼らは前に出るしかなかった。

 結果、鳥栖のポゼッションを捕まえることもできなければ、前線へのシンプルな攻撃でも起点を作られ、前半終了間際には痛恨の2失点目を喫してもいる。FKからのこぼれ球をダイレクトで叩き込んだ酒井のシュートは控えめに言ってスーパーな得点だったが、普段はしないようなクリアミスが発端だったことは留意が必要だ。「前半は『1失点で仕方ない』で終わっても良かったのかも…」中谷の後悔は募った。
 

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