昌平の切り札は第二の内田篤人になれるか? 選手権で決定力を発揮してきた“9番”がサイドバック転向のワケ

2021年04月12日 松尾祐希

昨冬の選手権では土壇場のラストプレーで追いつく劇的な同点弾を奪う

今季はキャプテンも務める篠田大輝。決定力のあるサイドバックとして躍動できるか。写真:松尾祐希

 昌平の新キャプテンとなった篠田大輝(3年)と言えば、決定力を武器に下級生時から名を馳せてきたアタッカーだ。昨季までは須藤直輝(現・鹿島)らを擁するチームにおいて、攻撃の切り札として活躍してきた。

 1年時の高校サッカー選手権では國學院久我山との3回戦(1○0)でアディショナルタイムに決勝弾を決め、昨冬の同大会では高川学園との1回戦(2△2/8PK7)で、ラストプレーで同点に追いつく一撃をヘディングでねじ込んだ。途中出場ながら残したインパクトは強烈。強靭なフィジカルと両足から繰り出すパワフルなショットも大きな可能性を感じさせた。

 しかし、迎えた新シーズン。昨季に続いて背番号9を託された一方で、自身の住処を移すことを余儀なくされた。新たに与えられたポジションは左SB。"攻撃的なポジション"にこだわりを持っていた篠田大からすれば、簡単に受け入れられる出来事ではない。チームメイトも含め、誰もが驚くSBでの起用だった。

「コンバートされたのは新チームが立ち上がって間もない頃。最初に知らされたのは全体ミーティングの際で、(ポジションが知らされる)ボードを見たら自分の名前が左SBに置かれていた。最初は『えっ!?』て思い、凹んだのを覚えています」

 淡々と当時の出来事を振り返った篠田大。今も少なからず、攻撃的なポジションに想いを残す。しかし、自分の口でしっかりと当時の状況を説明できるのは、新たなポジションで手応えを感じているからに他ならない。今季の初戦となった4月10日のプリンスリーグ関東・2節の東京Vユース戦では、自信に満ちたプレーでチームの勝利に貢献した。

 不慣れなポジションでのプレーはまだ片手で数えるほど。しかし、東京V戦では破壊力のある仕掛けで何度も攻撃に参加し、高いポジションを取る姿はウイングと見間違えるほどだった。

「自分がパスを受けたら、相手は遅れた状態でケアに来る。あとは自分の間合いでかわせばチャンスになるので楽しい」とは篠田大の言葉。昨季まで最前線で発揮していた攻撃センスはポジションが変わっても健在で、37分には左サイドを打開してチャンスを生み出す。「昌平入学後に最も成長したのはドリブル」(篠田大)。本人が自信を持つ形からサイドを抉り、ゴール前に走り込んだ実弟・翼(2年)の先制弾をお膳立て。また、守備でもフィジカルの強さやハードワークを見せる。相手のクロスに対して身体を投げ出して防いだのは、一度や二度ではない。2-0で初陣を飾った昌平において、攻守で"左SB・篠田大"が今季のストロングポイントになる可能性を示した。
 

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