非の打ちどころがないのではないか。川辺駿が見せた安定感抜群のハイパフォーマンス

2021年04月08日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

攻守でいたるところに8番がいた印象が強い

横浜FC戦に先発した川辺。ハイパフォーマンスを披露した。写真:滝川敏之

 3-0で横浜FCに快勝した一戦で、広島でひと際安定感あるパフォーマンスを披露していたのは、アンカーの川辺駿だった。

 ひと言で言えば、非の打ちどころがない。攻撃時は中盤の底で味方と細かいパスをつなぎながらリズムをもたらし、手詰まりになればサイドチェンジで局面を変える。そして20分には的確なポジショニングでスッと浅野雄也のサポートに入り、「どうぞダイレクトでシュートを打って」というメッセージが込められているような思いやりのあるパスでアシストを決めた。

 守備も出色の出来だった。まず常に立ち位置が良いので、セカンドボールをよく拾う。そしてサイドで味方が相手に突破を許したかと思えば、すかさずカバーリングに入って「ガンっ」と音が聞こえるような強いブロック。とにもかくにも、攻守でいたるところに8番がいた印象が強い。

 川辺は3月シリーズで日本代表に初招集された。磐田時代の2017年にもA代表に推す声が聞こえたが、日の丸デビューが今季になったのは合点がいく。ポイントは欠点の少なさ。かねてより定評があった攻撃センスに加え、18年から19年で徐々にディフェンス力を上達させ、20年でハッキリと守備強度が上がった。だからこそ、横浜FC戦で披露した安定感抜群のハイパフォーマンスを見て、代表招集された所以を改めて理解できた。

 ちなみに、同じく3月シリーズで代表デビューを飾った稲垣祥も攻守で能力が高い。彼の場合はかねてより豊富な運動量と守備力を買われてきたが、攻撃センスを身につけたタイミングで日の丸のユニホームに袖を通した。一部記事では名古屋でオフェンス力が上達したという見解も目にしたものの、個人的に稲垣は広島時代の19年にパス能力が飛躍的に向上したと思う。なので稲垣と川辺にウィークポイントを克服できるよう働きかけた城福浩監督は、本当に素晴らしい指揮官だと感じている。

 こうしてJリーグで目立つ代表クラスのボランチを見ると、なんでもできる中盤にならないと生き残れないのかもしれないと思う。実際、ひと昔前まで図抜けたパスセンスで名声を博した選手もカテゴリーを下げたり、J1にいる極上のキック精度を誇る名手も守備に忙殺されているので目立っていない。

 さて川辺のプレーに話を戻すと、現時点での改善点を強いて挙げるならミドルシュートだろう。その重要度は難敵の名古屋(4月14日)や川崎(4月18日)との試合で増すだろうし、個人として評価を上げるためにも必要になってくる。

 筆者は勝手に、ミドルシュートの上達で川辺のさらなる評価アップを願っているが、そこに対して本人は、もしかしたら強い想いはないかもしれない。なぜなら、横浜FC戦のプレーからは自らが目立つよりも、「チームが勝つために何ができるか」というスタンスが垣間見えた。だからこそ、背番号8とキャプテンマークが似合っていたし、より輝いて見えた。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事