日韓戦で浮き彫りになった“サイドバック飢饉”。深刻化する韓国では「実力が劣る選手のポジション」との価値観も

2021年04月04日 サッカーダイジェストWeb編集部

「ホン・チョルに代わる選手はいない」と叫んでいるかのように

日韓戦、森保ジャパンは終始サイドで主導権を掌握。とりわけ伊東(左)は韓国の左サイドを存分に蹂躙した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部:JMPA代表撮影)

 0-3の惨敗に終わった日韓戦から10日が経過したいまもなお、韓国サッカー界では活発な議論や考察が繰り返されている。はたして代表チームは、パウロ・ベント政権のままで大丈夫なのか。すべてはワールドカップ予選を勝ち抜き、カタール本大会で躍進を遂げられるかどうかに帰結している。

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 指揮官の戦術構築や采配、代表戦士たちのモチベーション、さらには大韓サッカー協会の支援体制に至るまで、批判の矛先は多岐に及ぶ。そんななか、日韓戦で話題となったのが、韓国代表の左サイドバック、ホン・チョルの招集問題だった。

 所属する蔚山現代は、ホン・チョルは怪我を抱えてコンディションが芳しくないと協会側に伝えていた。にも関わらず、ベント監督は迷わず日本への遠征メンバーに組み込み、しかも先発フルタイム出場を強いたのだ。動きが緩慢なホン・チョルは森保ジャパンの右サイドコンビ、伊東純也と山根視来らに狙う撃ちされ、前半で2点のリードを許す一因ともなったのである。

 全国スポーツ紙『スポーツソウル』は、代表監督によるホン・チョル起用の裏側に、韓国サッカー界が抱える病理が潜んでいると示唆する。「韓国代表の"サイドバック欠乏症"が、いまや警告灯から赤信号に変わりつつある」と危機感を募らせ、次のように論じている。

「日本の攻撃陣はホン・チョルのいる左サイドを狙い続けていたが、ベント監督はまったく意に介さない様子だった。それは『コンディションが良くなくても、ホン・チョルに代わる選手はいない』と叫んでいるかのようだった。韓国サッカー界は以前から、A代表だけでなく世代別代表でも、国際的に競争力を持つサイドバックの選手が急激に減少し、"サイドバック飢饉"に陥っているのだ」

 若手の台頭はあるものの、A代表の近未来を背負って立つような逸材が見当たらない。同紙は「守備でもマルチプレーヤーの需要が高まっており、サイドバック専門より中央もこなせる選手を多く起用する傾向が強い」と指摘し、加えて「攻守どちらも負担を抱えるポジションという特性上、有望株が選択を避ける現象もある」と考察する。

 いったいなぜそこまで深刻化してしまったのだろうか。

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