「ぅううおぉりゃああ゛ぁ!」舩木翔の“飛び道具”は相模原の新たな武器になるか

2021年04月01日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

遊びで投げていたら「意外と飛んだ」

左ウイングバックのレギュラーに定着しつつある舩木はムードメーカーの一面も。「基本的に楽しいことが好き」。写真:田中研治

 ピッチに雄叫びが響く。

「ぅううおぉりゃああ゛ぁ!」

 3節のファジアーノ岡山戦を週末に控えたある日の練習後、SC相模原の舩木翔は、唸り声をあげながらボールを飛ばしていた。足ではなく、両腕で。

 ロングスローでどこまで投げられるか。1本投げては「ああぁ~」と肩を回す。また投げては「けっこう飛んだ!」と歓喜する。

 自慢の武器を磨いているわけではない。むしろロングスローは"初心者"の部類に入る。

「最初はふざけてやっていたんですよ」 

 だが、遊びで投げていたら「意外と飛んだ」。それなら、本腰を入れてみるか。

「自分も投げられれば、得というか、チームの武器になると思ったんで」

 以後、実戦の場で何度かロングスローを試みるも、まだ得点にはつながっていない。本人も「そんなに飛んでいない」と分析し、「もう少し投げられるようになったら、チャンスになると思う」と上達への意欲を示す。

 もっとも、舩木の魅力は他にもある。左足の正確かつ強烈なキック、豊富な運動量。ワイドのアタッカーに必要なスキルを備え、攻守両面で奮闘を見せている。

 京都サンガF.C.との開幕戦は途中出場、2節のザスパクサツ群馬戦はメンバー外だったが、3節の岡山戦以降は、左ウイングバックを主戦場に先発フル出場が続く。

 セレッソ大阪の下部組織出身で、17年にトップ昇格を果たす。20年にジュビロ磐田にレンタル移籍し、今季は同じくC大阪からのレンタルで相模原に新天地を求めた。

 C大阪でも磐田でも、シーズンを通して思うように出場機会を得られなかった。今度こそ、主力の一員として充実した日々を送りたい。

「自分はここで試合に出て、活躍するために来ました。その気持ちをずっと持ち続けて、練習に取り組んでいます」

 当初はチームのやり方に慣れるまで時間がかかったという。だが「今は自分の中にだいぶ浸透してきました」。レギュラーに定着しつつあるが慢心はない。「結果にもっとつなげたい。今はやり続けることが大事」と気合いを入れ直す。
 
 今季でプロ5年目。さらなる飛躍と成長を期す22歳は、「基本的に楽しいことが好き」なムードメーカーでもある。

 練習中も率先して大きな声で盛り上げる。シュート練習で自分の番が終わると、列に戻る際にコミカルな動きで笑わせようとする。そして、臆することなく先輩をイジる。

「けっこうしゃべるタイプで、うるさいと思うんですけど。先輩が好きで、なんか気づいたらイジッちゃいます(笑)」

 それが舩木流の距離の縮め方なのだろう。「先輩からしたら、クソ生意気な後輩かもしれないですけど、でも僕、コミュニケーションの取り方、それしか知らないので(笑)」と屈託なく笑う。

 もちろん、「はしゃぐところと真面目なところを切り替えながら」と、オンとオフははっきりさせている。気力がみなぎるレフティは、相模原でステップアップを遂げることができるか。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストweb編集部)

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