モンゴル一蹴も目を向けたい“懸念すべき依存”。守備陣で心配なのが…【編集長コラム】

2021年03月30日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

小川らは模擬試験で結果を残したに過ぎない

モンゴル戦ではチャンスにも絡んだ吉田。今後、このキャプテンを不測の事態で失うと……。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 3月30日に行なわれたモンゴル戦は勝って当たり前の相手とはいえ、14―0と歴史的勝利に終わった。最後まで攻め抜いた日本の姿勢は称えられるもので、韓国戦の勝利(3月25日/3-0)がモンゴル戦に良い影響をもたらしたとも言える。

 最初のふたつのゴールシーンを振り返れば、南野も大迫もシュートに持ち込む前のトラップが秀逸だった。鎌田が奪ったチームの3点目は、伊東のクロスの質に加えて、大迫のニアサイドで潰れるプレーも素晴らしかった。

 29分に速攻の起点となった守田のアウトサイドパスも美しく、大迫のポストプレーは相変わらず冴えていたし、鎌田のテクニックも光った。そして稲垣は代表デビュー戦でいきなり2ゴールとアピールした。

 チームとしてもコンパクトな陣形を保ちつつ、テンポ良くパスを繋いで中央からもサイドからも崩せた。相手にラッキーパンチも与えず、完封で乗り切った点も踏まえれば、このモンゴル戦はパーフェクトゲームだった。
 
 とはいえ、違う見方をすると、ワールドカップ・アジア2次予選のグループFで最下位のモンゴルを相手に美技を連発できるのは当たり前とも……。少なくとも、韓国戦を含む今回の連戦で酒井と長友への依存度が高かった両サイドバックの戦力に目途がついたと安心するのは危険だ。山根、松原、佐々木、小川が本当の戦力になり得るかは最終予選で答が出るはずで、彼らはいわば模擬試験で結果を残したに過ぎない。

 最終ラインではCBも心配だ。吉田もしくは冨安になにかしらのアクシデントが起きた場合、彼らと同レベルの代役はいるのか。また最前線は大迫頼みでいいのか。大勝した試合のあとだからこそ、冷静に現状の問題点と向き合うべきだろう。

 課題を浮き彫りにし、その改善策を探る意味では、昨年の欧州遠征のような実のある試合をどんどん組むべきだ。もちろんコロナ禍でそんな都合よく対戦相手を探せないのは承知している。とはいえ、実力国とのゲームをコンスタントにこなす意義は、プレミアリーグでプレーする南野のしなやかで力強いプレー、セリエAで怪物FWと対峙している吉田や冨安のディフェンスを見れば理解できるだろう。トップクラスの選手としのぎを削ってこそ得られるものは大きいし、そういう場での経験がひいてはワールドカップ予選を戦ううえでの余裕につながるのだ。

 目の前の試合に集中することはもちろん大事。しかしここまでくれば2次予選敗退はまずないだろうし、アジアの強国が集う最終予選に向けての準備に着手すべき段階にきている。前回のワールドカップ最終予選を振り返ると、守備の不安定さ(特にUAEとの初戦)が苦戦を余儀なくされた原因のひとつだった。韓国戦でもスタメンを張った吉田と冨安のコンビに依存する戦い方は、今後を考えるとやや不安に映る。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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