重要な先制点の布石となった26分のシーン。フォーカスすべきは攻撃面で縦と横の幅を上手く支えていたこと

2021年03月30日 河治良幸

立ち上がりから腰が引けることなく間合いを詰める

瀬古のロングフィードに抜け出した林がゴールネットを揺らす。勝負の趨勢を決める貴重な先制点だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 アルゼンチンに3-0の勝利でリベンジを果たした日本代表。「同じ相手に、しかもホームで負けるなんてあり得ない」と久保建英が振り返る通り、まず戦術以前にチームが戦う姿勢をあらゆる要素で示したことが大きな勝因だろう。

 結果的にCKから久保のキックに板倉滉がヘッドで合わせる形から2点が生まれているが、やはり前半の終わりに生まれた先制点が勝負の趨勢を決めたのは間違いない。そのゴールはセンターバック瀬古歩夢のスーパーパスから生まれた。林大地が2センターバックの裏で受けて、右に持ち出しながらGKが出てきた横から流し込んだ。

「歩夢からすごく良いボールが来た。その前も味方同士で、しっかりつないで僕のところに来たので、決めないといけない責任がFWにはある 」

 このシーンを演出した瀬古、決めた林ともに素晴らしいが、ここまでの流れを作ったのはチーム全体での狙いを持った攻撃だ。特にボランチでコンビを組んだ板倉と田中碧の関係は見事で、アルゼンチンのディフェンスが日本の攻撃に対して的を絞れなくなる状況を作り出した。

 この日の日本は3日前の1試合目と打って変わり、立ち上がりから腰が引けることなくアルゼンチンのボールホルダーとの間合いを詰めた。そこでひとつ剥がされるとピンチになるリスクは全体のハードワークで共有できていたし、形を3-4-2-1にしたアルゼンチンもやりにくさを感じているようではあった。
 
 そうしたことから守備で高い位置からプレッシャーをかけられていたこともあるが、よりフォーカスしたいのは攻撃における縦と横の幅を上手く支えていたことだ。1試合目は三笘薫、久保、三好康児というテクニカルな2列目を生かそうという意識が先に出過ぎたのか、全体の視野が狭くなり、ボールロストも起きやすくなっていた。

 しかし、2試合目はボランチのふたりが起点になりながら常に裏を狙う林をひとつの狙いとして、左ワイドに張る相馬勇紀、中央と右で頻繁にポジションを入れ替える食野亮太郎と久保のところを仕掛けのスイッチに。そしてタイミングを見て右サイドバックの原輝綺がインナーラップでチャンスに絡むなど、個人として強いだけでなくコンパクトな守備を強みとするアルゼンチンを逆手に取っていた。
 

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