"4戦不発"と深刻な得点力不足の浦和を救えるか?新天地デビューの西大伍がもたらす変化

2021年03月27日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

見逃せなかったのが、FWへの縦パス

出遅れていた西がようやく復帰。攻撃に変化をもたらそうとしている。(C)SOCCER DIGEST

 浦和レッズは3月27日、ルヴァンカップの柏レイソル戦に0-1で敗戦。これで公式戦4試合勝利なし。しかも、いずれも無得点と不甲斐ない結果が続いている。

 柏戦で露呈したのも得点力不足だった。

 チャンスがまったくなかったわけではない。15分には杉本健勇のクロスから、60分には西大伍のクロスから、興梠慎三がヘディングで合わせてゴールを狙った。39分には伊藤涼太郎がミドルシュートを放ち、74分には小泉佳穂のロングパスに抜け出した杉本がゴールに迫った。

 しかし、いずれも精度を欠き、結局最後までゴールネットを揺らせず。逆に79分に喫したCKでの失点により、勝点を失った。

 リカルド・ロドリゲス体制が始動してから約3か月が経とうとしているが、いまだに狙いがはっきりとせず、柏戦でも再現性の高い攻撃を仕掛けられたとは言い難い。

 それでも、そんな柏戦での収穫は、故障から復帰した西だった。そして、この右SBこそが、チームを苦境から抜け出させるキーマンとなるだろう。
 
 今季ヴィッセル神戸から加入した西は、この試合で移籍後初出場すると、絶妙なポジショニングでスムーズなビルドアップに寄与。空間把握能力と攻撃センスの高さを垣間見せた。

 見逃せなかったのが、FWへの縦パスだ。くさびのパスだけでなく、相手ディフェンスラインの背後を狙うボールで攻撃に変化をもたらした。FWが反応できず、なかなか形として成立しなかったものの、中盤を飛ばして一気に局面を覆すパスは少なからず相手のDF陣を慌てさせていた。

 とりわけゴールに近づいたのが9分のシーンだ。西からの縦パスを2トップの一角に入った杉本が落とし、走り込んでいたボランチの伊藤敦樹がゴール前に展開。このボールがやや長く、最前線にいた興梠慎三にはつながらなかったものの、相手の守備陣を素早く攻略した素晴らしい崩しだった。伊藤敦のパスがつながっていれば、興梠は1対1の局面を迎え、高確率で得点につながっていただろう。

 こうした局面を一気に打開するパスセンスが、西をキーマンに挙げるひとつの理由だ。柏戦までの公式戦7試合を戦ったチームでは、SBからFWへの縦パスはまったくと言っていいほど見られず、近場の選手の足もとへとつなぐショートパスが基本だった。ポゼッション率は高くても、ディフェンスラインを破れない理由が、まさにそのパスワークの単調さだと言える。

 西が復帰したばかりの柏戦ではまだまだ息の合わない場面が散見されたが、これから連係を深め、チーム全体がこのパスに反応できるようになれば、攻撃の幅は大きく広がる予感がある。得点力不足に喘ぐチームを浮上させる救世主となれるか。西の活躍に期待がかかる。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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