レンジャーズ戦士の人種差別被害を受け…伝統の一戦を前に両軍が決意の“スタンディング”。主将は「大きなメッセージ」

2021年03月22日 サッカーダイジェストWeb編集部

被害者本人は「今こそ形骸化を止めるべき」

問題の起こったELから中2日、カマラはセルティック戦でもフル出場した。(C)Getty Imagse

 現地時間3月21日、スコットランド・リーグ第23節で、セルティックとレンジャーズが激突するオールドファームが実施され、1-1のドローに終わった。ただ今回、100年以上の歴史を持つ伝統の一戦で、白熱のゲーム内容以上に注目を集めているのが、レンジャーズ戦士の人種差別被害を受け行なわれた、決意の"スタンディング"だ。英紙『Daily Mail』が内幕を詳しく伝えている。

 問題が起こったのは、現地時間3月18日に開催されたヨーロッパリーグ(EL)ラウンド・オブ16第2レグ、レンジャーズ対スラビア・プラハの試合終盤のことだ。スラビアのDFオンドレイ・クデラが口元を手で覆いながら相手MFグレン・カマラの耳元で何事かを囁く。それを聞いて激昂したカマラがクデラに詰め寄り、両チームの選手たちが入り乱れる騒ぎに。

 チェコ代表の33歳はこの時に「fucking monkey」と発言したと伝えられており、人種差別問題として欧州サッカー連盟(UEFA)が調査に乗り出すなど、現在小さくない騒動となっている。

 そんななか、ELのスラビア戦から中2日で迎えたダービーマッチ。両チームは人種差別反対の意味を込め、キックオフ直前に行なわれている膝つきを拒否。あえて数秒間、直立不動でいることを選択した。レンジャーズのキャプテン、ジェームズ・タバーニアはこの真意を、こう明かしている。

【動画】伝統の一戦前、両軍は膝をつかず決意の直立不動
「それは十分に強いものではないが、立ち上がれば、行動が必要だというより大きなメッセージを送ることができると信じている。今シーズン、私たちの黒人選手は全員、人種差別を受けているんだ。これは彼らへの明確なメッセージでもある。我々はもううんざりなんだ」

 また、チームを率いるスティーブン・ジェラード監督も「共に戦う」と姿勢を示している。

「選手たちが話し合ったことを知らなかったが、ジェームズらが私のところに来て、彼らが下した決断を完全に理解した。私は100%支持する」

 一方で、カマラ本人は19日に弁護士を通じて発表した声明内で、UEFAに疑問を投げかけている。

「夏以降、私たちの多くは、人種的暴力によって命を落とした人々に連帯して、膝をついている。UEFAが本気で人種差別にレッドカードを突きつけることを望んでいるのであれば、今こそ形骸化を止めて、より厳しく取り締まるべきだ。オンドレイ・クデラによる卑劣な行動は、国際的な舞台で行なわれたものであり、UEFAが行動を起こさなければ、人種差別にゴーサインを出したとみなされるだろう」

 一向になくならない人種差別行為は、スポーツの魅力を大きく損なう。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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