「クソ野郎と言っただけ」顔面キック、人種差別疑惑、暴力事件まで? 渦中のレンジャーズ、スラビア両陣営が声明を発表

2021年03月20日 サッカーダイジェストWeb編集部

「人種差別にレッドカードを」

カマラ(中央)がクデラ(15番)に暴言を吐かれて激昂。両チームの選手が入り乱れる騒ぎとなった。(C)Getty Imagse

 現地時間3月18日に行なわれたヨーロッパリーグ(EL)ラウンド・オブ16第2レグで、チェコ1部のスラビア・プラハがスコットランド1部のレンジャーズを敵地で2-0と粉砕。アグリゲートスコア3-1でベスト8進出を決めた。

 この試合で起きた「2つの事態」がヨーロッパ全土で話題をさらっている。まずは、スラビアGKのケガだ。61分、レンジャーズのケマル・ルーフェの足が、オンドレイ・カラーの顔面を捉え、一発退場に。直後に守護神は病院に運ばれ、クラブは「頭蓋骨にヒビが入った重傷」と発表。帰国し、専門の医療施設で治療を受けているという。

 そして、もうひとつが人種差別疑惑だ。試合終盤、スラビアのDFオンドレイ・クデラが口元を手で覆いながらレンジャーズMFグレン・カマラの耳元で何事かを囁く。それを聞いて激昂したカマラがクデラに詰め寄り、両チームの選手たちが入り乱れる騒ぎになった。この件については、欧州サッカー連盟(UEFA)が調査に乗り出している。

 試合終了後にはカマラがクデラを殴りつけたなどとも報じられるなど、荒れに荒れた試合から一夜明けて、両陣営はそれぞれ声明を発表した。

 レンジャーズのMFカマラは自身の弁護士を通じ、「同僚ボンガニ・ズングもその暴言を聞いた。プロサッカー選手からこんな言葉を言われたことにショックを受け、恐怖を感じている」と書面で発表。「卑劣な人種差別にレッドカードを突き付けてほしい」と訴えかけている。

「オンドレイ・クデラによる卑劣な人種差別的虐待は国際舞台で行なわれた。これに対してUEFAが行動を起こさない場合、人種差別を容認したとみなされることに他ならない。彼は、私が(その前に起きていたいざこざの)仲裁に入ろうとしたとき、『黙れ』と言ったのち、口元を手で覆いながら、耳元で卑劣な言葉を口にした。われわれ黒人選手は、こうした偏屈が世間やSNS上などで憎しみを生みながら練り歩く自由を与えられていることにうんざりしている」
 
 一方のスラビアは、試合後にカマラがクデラを殴りつけたと主張し、「クデラへの身体的暴行についてスコットランド警察に刑事告訴した」と訴えている。

 声明では「この暴行は、事件現場のカメラを隠すなど、準備された意図的な行為だった。選手を傷つけ、身体的気概を加えることを意図した、残忍なもの」と批判し、「現場ではジェラード監督やUEFA代表者が目撃していた」としている。

 さらに、当事者のひとりであるクデラはチェコ誌『iDnes』の取材に応じ、「私は差別主義者ではない」と疑惑を否定した。

「口を覆ったことで疑惑を持たれているが、私はピッチ上では常にそうしている。カマラに言ったのは、『お前はクソ野郎だ』ということだけだ。あの場面で、ベテラン選手の一人として、チームの副キャプテンとしてチームのために立ち上がる必要があった」

 加えて、試合後には「ロッカールームに45分間も入ることができなかった」とも明かしている。

「私のキャリアの中で初めての経験だった。彼らはわれわれのロッカールーム入りを阻止した。UEFA代表がどんなに努力しても、ホストは僕らを尊重してくれなかった。事態が落ち着いたかと思われたとき、トンネルでカマラに会ったんだ。そうしたら、彼は前触れもなく、私の顔を拳で殴った。反撃はしていない。その場に居た警備員とUEFA代表は驚いていた。その後、私はドーピングチェックに行かなければならなかったんだ」

 そう語ったクデラは、こうした話題について「落胆している」ともコメントした。

「こんなに素晴らしい勝利を収めたのに、誰もわれわれが達成したことを記事にしてくれない。それが残念だ」
 
 スラビアはELラウンド・オブ8でアーセナルと対戦することが決定している。この問題に関していかなる裁定が下るのか、引き続き注目される。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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