“想定内”から“予定調和”の勝ちっぷり。開幕5連勝の名古屋、盤石の強さは偶然ではなく必然だ

2021年03月18日 今井雄一朗

そして“想定内”に前半は動きのない試合となる

流れを引き寄せる先制点を挙げた前田。「自分は飛び込むだけで当てるだけ。(アシストした)吉田選手に感謝したい」。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)

 盤石、という表現がこれほど似合うチームもなかなかない。常勝軍団と呼ばれた頃の鹿島が一番近い気がするが、とにかく試合を相手のものにさせない安定感が図抜けている。

 開幕から負け続きの横浜FCをホームで迎え撃つにあたっても、いつもどおり"最強状態"の相手を想定したうえで準備を進めてきたマッシモ・フィッカデンティ監督は、奮闘を見せた相手に敬意を表しつつも、淡々として次のように語った。

「我慢しながら前半を戦い、ハーフタイムにどういったところでスピードを上げていくことで、相手が一瞬でも隙を作るか、そこを突いていくか。スピードを上げるタイミングを合わせることで1点を挙げることができた。

 そこからは相手もスコアを戻さなければいけないというなかで、よりスペースを与えてくれたので、そこでまた試合の流れというものをじっくり見ながら冷静に2点目、3点目という試合ができた」

 落ち着いたものである。そして、手慣れている。横浜FCはコンパクトな守備を自陣に敷き、相手の特徴が最も生きるスペースをハードワークで消して対抗してきたが、名古屋の手練手管はその作戦を軽々と上回ってきた。コンディションのフレッシュさを保つ意味もあって山﨑凌吾やマテウスをベンチスタートとした裏には、おそらくは序盤はスペースがない展開になると踏んでのことだ。
 
 その証拠に、この日の前線は1トップにガブリエル・シャビエル、トップ下に柿谷曜一朗とスペースがないなかでもテクニックを発揮する選手でゼロトップ的に構成してきた。サイドハーフには、相手の攻め手のひとつである攻撃的なサイドバックを牽制する意味での前田直輝と相馬勇紀のチョイス。マギーニョの裏を相馬に突かせ、前田には「準備の段階で監督にはサイドバックとの1対1を多く作れと言われていた」と、やはり明確な役割を持たせている。

 そして"想定内"に前半は動きのない試合となり、「セレッソ戦から3人を入れ替えただけの相手は、そのペースで90分間やるのは難しいだろう。相手は落ちてくる」(フィッカデンティ監督)と後半を読んだ指揮官は、チームにプレッシングを指示。「後半は僕らが前線から引っかけられるようなシーンが増えて、少しずつ間延びというかオープンな展開にもなった」と語った前田が、吉田豊の突破を先制点に結び付け、そこからはもはや予定調和だ。

 名古屋が守備を締め、前に出てくる相手の裏を突いて追加点を狙う。この日はその作業がさらに2得点を生み、前の3試合とは打って変わって快勝の趣も強くした。
 

次ページ慌てず、騒がず、淡々として勝つ

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事