【FC東京】スペクタクルは必要か?

2015年04月26日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

面白くなければないほど、FC東京のペース。

FC東京はわずか1年あまりで、「守備こそ美学」のリアリスト集団に変貌を遂げた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 正直、FC東京のサッカーは面白くない。

【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・7節

 マッシモ・フィッカデンティ監督が就任した昨季以上にスペクタクルの香りはなく、最大の持ち味が堅牢なディフェンスなのだから視覚的にはそう映る。失点のリスクを極力抑えて白星を掠め取るスタンスは、J1リーグ7節までの結果を見ても一目瞭然だろう。
 
 G大阪との開幕戦は2-2、2節の横浜戦は0-0、3節の神戸戦は2-0。続く甲府戦と湘南戦がともに1-0で、広島戦の敗戦(1-2)を挟んで直近の山形戦が1-0と、クリーンシート(完封試合)は早くも5つを数える。面白くなければないほど、FC東京のペース。そう言っても過言ではない。
 
 古き良き時代のイタリア・サッカーを彷彿させるとまでは言わないが、戦術のベースは明らかに守備だ。ランコ・ポポヴィッチ監督時代(2012~13年)は、「攻撃こそ美学」を合言葉にあれほどパスサッカーにこだわっていたFC東京が、わずか1年あまりで「守備こそ美学」のリアリスト集団に変貌を遂げた。山形戦後の太田宏介のコメントからも、マッシモトーキョーの指針は窺える。
 
「山形が前から来ることは分かっていました。もうちょっとボールをつなげれば良いという本音はもちろんありますが、そこは割り切ってというか、リスクをかけずに戦えたと思います。内容的には面白くないゲームだったかもしれません。でも、今年は勝ち切る意識を強く持っていますし、それが結果につながったのがなにより良かった」
 
 確かにサッカーは面白さを追求するスポーツではない。芸術点も、技術点もない。内容に関係なく、相手より1ゴールでも上回ったチームが勝つのだ。つまり、点を取られなければ負けない。"カテナッチョのDNA"が宿るイタリア人のフィッカデンティ監督は、だからこそ失点をなにより嫌う。太田は続ける。
 
「そういうサッカーを昨年からやってきて、今年はミステル(監督の意)が目指すサッカーを選手たちがより深く理解してきました。山形に苦しめられた今日の試合でも、勝点3を獲れるようになったところは自分たちの自信にしていい」
 

次ページ結果がついてくるかぎりは“堅守・東京”を貫くべき。

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