先手必勝。“頭の回転が速い”秀才ボランチに舌を巻いた【名古屋】

2021年03月11日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

なにより光ったのが危機察知能力の高さ

名古屋の米本が柏戦で好パフォーマンスを披露した。写真:徳原隆元

[J1リーグ3節]柏 0-1 名古屋/3月10日/三協フロンテア柏スタジアム

 1-0で柏を下した一戦で、名古屋でひと際素晴らしい働きをしたのは米本拓司だった。

 なにより光ったのが危機察知能力の高さで、米本は柏の攻撃を先読みし、ことごとくパスカットしていた。きっとイエローのユニホームに身を纏った面々にしてみれば、「また米本、ここにも米本……」というような感覚で、かなり厄介な存在に映ったはずだろう。

 まず象徴的だったシーンが25分、柏の椎橋慧也にボールが入ると、米本は人に対してプレッシャーをかける。椎橋がトラップと同時に横の江坂任へ身体を開いた瞬間、パスコースに先回り。しかも奪ったボールをダイレクトでマテウスにつなげた。一手どころか、二手先まで展開をイメージしている"頭の回転の速さ"に舌を巻いた。

 その後も、米本は何度も柏のアタックを遮断するだけでなく、前線のアタッカーが攻撃で行き詰まれば、すっと後方にパスコースを作った。そして57分には、右サイドで拾ったセカンドボールをダイレクトでマテウスへスルーパスを送り、決勝点の起点になっている。どれもポジショニングが良いからこそ成せるプレーだろう。

 もちろん決勝ゴールを決めた稲垣祥も米本と同じくらい好パフォーマンスを見せていた。まるでFWのようにこぼれ球を詰めてネットを揺らした得点はもとより、自陣ゴール前付近でも身体を張ったディフェンスを披露。さすがの運動量だった。

 その稲垣が心置きなく走り回れるのも、米本がバランスを取って中盤のスペースを埋めているからだろう。どちらが良いというわけではなく、"米本がいるからこそ稲垣が輝くし、稲垣がいるからこそ米本が輝く"。つまり両者の補完性は抜群だった。

 身体能力や技術など、目に見えるスキルが優れている選手は多い。ただ、米本のように"頭がキレキレ"のプレーヤーは稀少。この秀才ボランチからは先手必勝の重要性を再確認させられた。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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