あまりに馬鹿げた「年俸リーク事件」。犯人はメッシの“価値”を分かっているのか?【現地発】

2021年03月09日 エル・パイス紙

優雅に飛行するワシを猟銃で撃つような行為だ

あまりの高額年俸にメッシを批判する声もあるが…。(C) Getty Images

 先日、バルセロナのフロント内部の頭でっかちのエリートによってリオネル・メッシの契約内容はリークされた。それはまるで理由もなく、優雅に飛行するワシを猟銃で撃つような行為だった。

 もしリークした人物が、リオネル・メッシのシンボル性を下落させるために起こした行動であるなら馬鹿げている。なぜなら彼はすでにレジェンドだからだ。あるいは経済的な側面が背景にあるのなら、次の一連の質問を事前に自問自答しなかったのだろう。

1、有り余るほどの名声と富をもたらす選手の価値はいくらなのか?
2、グローバル化が進む昨今においてレジェンドがクラブ(あるいはそのホームタウン)の顔になることでどれほどの価値がもたらされるのか?
3、天才がフットボールという大衆的かつパッショナルなスポーツに全てを捧げることによってもたらされる幸福はどれほどの価値があるのか?
4、バルサの歴史に残す足跡はどれほどの価値を持つものなのか?
5、そして最後に情報をリークした人物の価値は?

【動画】メッシからユニホーム交換を求められ、驚きの表情を浮かべるエルチェGK
 神と崇められる何人かの選ばれた選手たちの価値を明らかにするために、わたしの10代の頃の恥ずかしい話をしよう。ヨハン・クライフのバルサへの移籍が発表された日、わたしが真っ先に行なったのはバルセロナという街を地図で探すことだった。

 申し訳ないことに当時のわたしはバルセロナがどこにあるのか知らなかったのだ。まあそれは若者の無知で許されるかもしれないが、タチが悪いのはフットボールが持つ社会的価値を認識しようとしないお偉方の面々だ。しかも困ったことにそういった輩は意外なほど多く、メッシがバルサでプレーすることが、クラブ、バルセロナ(=街)、カタルーニャ、スペイン、ラ・リーガにとってどれほどの意味があるのかをまるで理解しようとしない。

 バルサの経営をここまで逼迫させたのは、大金を投じて獲得したにも関わらず、何の爪痕も残せていない選手たちが続出しているからだ。メッシはいうまでもなくエポックメイキングな選手だ。デビューしてから16年が経過したが、その長きにわたり見せてきたプレーの数々、そしてこれから披露する活躍は永遠に人々の記憶に生き続けるはずだ。

 わたしはもちろんメッシのプレーに魅了されるひとりだ。フットボーラーとしても偉大だが、驚嘆に値するのはその飽くなき向上心だ。メッシという人間として日々生活することは決して簡単なことではないはずだ。普通の人間ならば遅かれ早かれ、周囲から押し寄せてくる波に飲み込まれるのがおちだろう。

 だがメッシは異次元のフットボールセンスに加え、名声に溺れるようなことは決してないメンタルの持ち主でもある。試合を終えて帰宅した後は、ごく普通の父親の顔に戻り、翌朝になれば子供たちを学校まで見送る。そしてこれはわたしの頭の中の想像に過ぎないが、試合になればクローゼットにしまっていた黄金の左足を取り出して、天才フットボーラーに憑依し、予測不可能なプレーを連発するのだ。

 今回の騒動だって同じだ。周囲から好奇な視線が注がれる中、まるで自身が関知していないかのようにいつも通りのプレーを見せた。メッシはフットボーラーという枠を超えても天才なのである。

【動画】衝撃の発言!公然とバルトメウを批判するメッシ

次ページ各々が50セントずつ出せば、メッシの年俸をカバーできる計算になる

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