【柏】ACL決勝トーナメント進出を手繰り寄せた「気迫」と「一体感」

2015年04月23日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「柏から世界へ」――。 “太陽王”は日本の希望の光となれるか。

9分、エドゥアルド(中央)が打点の高いヘディングシュートを突き刺し先制。全北現代のリズムを崩し、主導権を握る大きな一撃だった。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 全北現代のラストプレーのコーナーキックを工藤壮人がクリアした瞬間、大粒の雨が降る日立台に、柏サポーターの歓喜のチャントが鳴り響く。公式戦26戦負けなしの韓国チャンピオンを3-2で下し、グループステージ1試合を残して今大会日本勢初の決勝トーナメント進出を、見事1位通過で決めた。

【ACL5節 PHOTOハイライト】 柏×全北現代

 この日の柏は、序盤からエンジン全開だった。攻撃の核であるレアンドロ、今季全試合で先発を務めてきた右SBキム・チャンスを出場停止で欠くなか、際立ったのが「球際」と「気迫」だ。輪湖直樹によれば、前日にACL敗退が決まった浦和の対戦相手が「日本人は戦えない」とコメントしているのを目にして、「柏の選手たちは上手さだけじゃなく、強さもある。気迫や気持ちで負けていないところを見せたい」と奮い立ったという。
 
 実際、輪湖が激しいスライディングやチャージを繰り出して、対峙するハン・ギョウォンを迎え撃てば、工藤は身長180センチ以上の相手CB2枚に何度も倒されながら身体を張ってボールをキープ。今季公式戦初出場の藤田優人はハードマークで相手を押し戻し、武富孝介は必死にセカンドボールに食らい付くなど、フィジカルで勝る韓国の選手相手にまったく引けを取らなかった。

 事前の対策に加え、「冷静さのなかでファイトする」(武富)という気持ちの面での充実が、イニシアチブを握る大きなファクターとなったのだ。
 
 もうひとつ、勝因として大きかったのは、9分と序盤に先制点を取れたことだろう。輪湖のCKをファーで待つエドゥアルドがヘディングで合わせて奪った1点が、全北現代のリズムを狂わせ、「バランスが乱れて、主導権を渡してしまった」(チェ・ガンヒ監督)。
 
 相手のハイプレスをかわしながらパスサッカーを展開した柏は、20分に武富がアタッキングサードをひとりでドリブル突破してゴールを突き刺すと、39分にはクリスティアーノのシュート性のクロスを押し込んでこの日2点目を決め、前半は「ほぼパーフェクトに近い試合展開」(茨田)だった。
 
 後半、「前半のサッカーを後半も続けないといけない」(輪湖)なかで、前線へのシンプルなロングボールで勝負する十八番の形に持ち込んできた全北現代に対し、前半に比べて受け身に回って守備の時間が増えてしまった。
 
「強引にでも自分たちの流れにしてくる」(鈴木)相手に、寄せがわずかに甘くなったところをイ・ドングッに付け込まれ、2得点を許している(オーバーヘッド、コース抜群のミドルシュートといずれもスーパーゴールではあったが)。勝っている試合でのゲーム運び、90分間集中して抑え切る部分に課題は出たが、それは決勝トーナメントへの教訓として胸に刻めばいいだろう。
 
 柏はACL3度の出場すべてで決勝トーナメント進出を決めている。それは過去の経験ももちろんだが、選手・スタッフを含めたチームの一体感が大きいとキャプテンの大谷秀和は話す。
 
「アジアで一番になれば、その先につながるものの大きさは、2011年にクラブワールドカップに出させてもらって十分理解しています。チームはスタッフを含め、『もう一度、クラブワールドカップに出たい』と気持ちがひとつになっているので、これを続けていきたい」
 
「柏から世界へ」――。Jリーグ勢の苦戦が続くACLで、"太陽王"は日本の希望の光となれるか。ノックアウトステージとなる決勝トーナメントからが本当の戦いだ。
 
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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