「何かを超越するという点で…」フランスの智将が読み解く日本人選手の“弱点”とは?【独占インタビュー/後編】

2021年03月02日 結城麻里

川島は「グッドサプライズ」だった?

南野(左上)、久保(右上)、冨安(左下)、酒井(右下)らヨーロッパのでプレーする日本人選手全体の印象をペラン氏が語った。 (C) Getty Images

 2007-08シーズンにリヨンを率いてリーグ・アンを制し、翌シーズンには古豪サンテティエンヌの指揮官として松井大輔(現サイゴンFC)を指導するなど、日本でも馴染みのあるフランス人監督アラン・ペラン。

 フランスのテレビ『Telefoot』で解説を務めてきた百戦錬磨の智将に、様々な興味深いテーマをぶつけてみた。

 不振にあえぐ古豪マルセイユで奔走する酒井宏樹と長友佑都を分析した前編に続く今回は、ヨーロッパで活躍する日本人に対する評価と、かつての愛弟子・松井への想いを訊いた。

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――ところで酒井と長友以外の日本人選手は見ていますか? 川島永嗣(ストラスブール
についてはどうでしょう。

アラン・ペラン(以下、P):(大きく頷いて)彼にはけっこう驚かされたよ。そもそも日本に「偉大なGK」という点ではあまりいい評判がない。だから、ストラスブールが日本人GKと契約したというだけでも驚きだった(笑)。ところが、彼は非常に安定していて、ダイナミックで、動きが良い。テクニックも極めて高く、キャッチングや瞬間的に難しいシチュエーションの決定的セーブもいとも簡単にやってのける。私にとっては、グッドサプライズだったよ。

――あなたは過去には中国代表でも監督をしています。そういうアジアでの経験などもふまえて、"日本人全般"の、強みと弱みを分析できますか。

P:中国に比べると日本は、育成でも若手の台頭でもずっと進んでいると思う。その結果、良い選手を外国に輸出できている。代表選手のクオリティーが高いから、ドイツなどでどんどんプレーするようになっているわけだ。

 そのクオリティーについて言えば、まさに熱意やダイナミズム、爆発力を備えているし、多くの選手がスピードと良いテクニックも持っている。またチームのためにコレクティブにプレーできる点も特徴だ。だが、まさにそこが、時として彼らの弱みになっているのかもしれない。


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――まさしく。私もそう感じます。

P:テクニカルなプレーで器用にこなしながら、監督の指示やチームメイトをリスペクトできることは極めて重要だ。だが、フットボールというのは、即興性、自己決断力、予想していなかったことにも即時に対応する力などが必要だ。とくに攻撃は、自分から主導権をとらねばならない。もちろん、それができている日本人もいるが、全般的にはおそらくこの部分が、日本人の弱みになっていると思う。個人が自分で決断する力だね。

――では、松井を指導した時はどうでしたか。

P:とてもトレーニングしやすい選手だった(笑)。私の指導によく耳を傾けて、いつもうまくプレーしようと思いながらピッチに出る選手だった。ただ、まさに"超越する"という点で困難を抱えていた。

 与えられた役割を超越して何かをやったり、思い切って自分からイニシアチブをとったりすることが、十分にできなかったんだと思う。でも本当に扱いやすい選手で、一緒にやるのが、とても楽しかった。


――あなたがサンテティエンヌの監督に就任した直後に、松井が復活を遂げた試合は、いまも鮮明に覚えています。あれからだいぶ経ちましたね。

P:ああ、懐かしいねえ(微笑みながら)。

――松井、いまもプレーしているんですよ。

P:えっ、本当!? どこで?

――ベトナムです。

P:へえ、そうか! 素晴らしいね。

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