両チームの高い集中力がプレーの質をカバーしたミラノダービー――インテル 0-0 ミラン

2015年04月20日 サッカーダイジェストWeb編集部

互いに意地を見せた結果、ここまでの不甲斐なさが浮き彫りに。

インテルは攻撃で、ミランは守備で高い集中力を見せたが、それでも完全ではないのが、今シーズンの両チームの質の程を表わしている。 (C) Getty Images

 セリエA第31節、通算174回目(セリエAでは166回目)のミラノダービーはスコアレスドローに終わった。
 
 試合そのものは、両チームともに最後まで集中力を切らさなかったことで締まった内容となり、見応えも十分にあった。かつてパオロ・マルディーニは「ミラノダービーとは何かを決する舞台ではなく、自分たちの精神力を試される場」と語ったが、それは今回も同様だったようだ。
 
 選手を奮い立たせるこのカードは、さらに勝者に対しては、その後の試合に向けての勢いを与えるものである。その意味でも、欧州カップ戦出場権を追い求める両チームとしては何とか勝利を奪いたかったが、ここでは両チームの今シーズンの歩みが反映されたかたちでともに決定力を欠き、痛恨のドロー決着となった。
 
 結果、ホームのインテルは勝点を42、ミランは43としたに止まり、目標はますます遠のくこととなった。
 
 試合は、インテルが序盤から積極的にミラン陣内に攻め込むも、ミランは守備で高い集中力を見せてゴールを割らせない。30分あたりからはミランがボールを持つ時間が増え、サイド攻撃から再三チャンスを生み出していった。
 
 後半は逆に、序盤はミランがボールを持つ時間が増えたものの、守備に多くの人数を割いたインテルに対して効果的な攻撃を仕掛けられない。それどころか、前がかりになったことでDFとMFの間にスペースを空けてしまい、ここを利用されてインテルに再三の決定的を許してしまうのだった。
 
 プレーに関しては、両チームともにこれまでと変わりはなかった。
 
 インテルはミランよりはるかに組織力では勝るものの、決定力と安定感に欠けた。56分、63分と相手のペナルティエリア内でのハンドで笛が鳴らなかったのは不運だが、それ以外に決めるチャンスがあったのも事実である。
 
 ここでは、フレディ・グアリン、マルセロ・ブロゾビッチといったMFの累積警告で攻撃の組み立てやフィニッシュの部分で厚みを加えられなかったのが響いたようだ。
 
 一方、ミランは組織面では相変わらず未熟なままだった。前節のサンプドリア戦では進歩の兆しを見せたが、今回は逆戻り。ジェレミー・メネーズの個人技に頼る場面が多く、パスワークで相手を崩すという場面は非常に少なかった。
 
 それでも、ダラけることなく試合が進んだのは、前述した通り、選手の集中力によるところが大きい。インテルは常に攻撃チャンスを狙い続け、少ない人数でも機敏に動いて相手にゴールに迫った。対するミランは、全選手が守備で効果的なプレス、絞り込み、ボール奪取を披露。ピンチでの身体を張ったプレーも印象的だった。
 
 これまでのようにトップスターもおらず、華やかさの欠けた伝統の一戦ではあったが、それでも見る者にポジティブな印象を与えた理由が選手のメンタリティーにあったとすれば、ここまでの試合でも同様の集中力を保っていたら両チームはどれだけの勝点を逃さずに済んだだろうか……。
 
 互いに意地を見せた結果、かえって両チームのここまでの不甲斐なさを改めて浮き彫りにしてしまった戦いでもあった。
 
 最後に、期待されていた日本人対決は、本田圭佑、長友佑都ともにピッチに立つことはなかった。ともに怪我の影響によるものと思われるが、回復した後の道のりも険しいものとなることが予想できる。
 
 とりわけ本田は、ポジションを争うアレッシオ・チェルチが徐々に調子を上げてきただけでなく、今回はスソが前線の右で鋭いシュートを放ったり、質の高いFKを蹴ったりして存在感を示した。スピードと突破力に乏しく、最近はセットプレーの精度を欠く本田は、この二人にどう対抗するか。高い戦術眼とパス能力という武器はあるが……。
 
 
 
 
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