7年ぶりのラ・リーガ制覇へひた走るアトレティコ。番記者が解き明かす戴冠チームとの「類似点」と「相違点」【現地発】

2021年02月23日 エル・パイス紙

13-14シーズンのチームはフィリペが陣取る左サイドが起点に

リーガ制覇に向け首位に立つアトレティコ(上)。7年前の優勝チーム(下)と比較すると…。(C)Getty Images

 アトレティコ・マドリーは、ラ・リーガの折り返し地点となる19試合を終えた時点で、勝点50の大台に乗せた。前回この偉業を達成したのはラ・リーガを制した13-14シーズン。その時と比較する声があがっていることに対し、当のディエゴ・シメオネ監督はチャンピオンチームと発展途上のチームとの差を強調するにとどめているが、具体的に「類似点」と「相違点」を見ていくことにしよう。

 最初の類似点はティボー・クルトワとヤン・オブラク、ジエゴ・コスタとルイス・スアレスといずれのチームもそれぞれ抜群の安定感と高い決定力を誇るGKとFWを抱えている点。基本システムは4バックと3バックの違いはあるが、19試合を終えた時点で、クルトワが喫した総失点数は11、オブラクは10、同じく1試合平均の被シュート数も8.9本と9.7本と接近している。

 最終ラインにおいて大きな相違点は、フィリペ・ルイスの存在だ。ビルドアップのキーマンとして機能し、現チームでウイングバックを務めるキーラン・トリッピアーやヤニック・カラスコは敵陣深くまで侵入する攻撃力を備えているとはいえ、組み立ての局面においてそこまでのプレゼンスはない。

 また13-14シーズンのチームはフィリペが陣取る左サイド経由で攻撃を開始することが多かったが、現在はトリッピアーが絡む右サイドがメインになっている。

 現チームで代わりにビルドアップの中核を担っているのが3バックの左を担うマリオ・エルモソだ1試合平均のパス本数67は、13-14シーズンのチームのレギュラーCBを形成していたディエゴ・ゴディンとミランダの34本と28本を大きく凌駕する。

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 エルモソとともに最終ラインを形成するステファン・サビッチ(52本)とホセ・ヒメネス(50本)もハイアベレージを記録。ジエゴ・コスタをターゲットにロングボールを蹴り込んでこぼれ球からの二次攻撃を仕掛ける形を基本戦術にしていた13-14シーズンのチームに対し、繋ぐ意識が高まった現チームの特徴が伺える。

 それは47%から54%へと上がった1試合平均のボール支配率からも明らかで、その中心選手として君臨するのがコケだ。13-14シーズンのチームのレギュラー陣の唯一の生き残りで、当時は左サイドを起点にしてダビド・ビジャやジエゴ・コスタへのパスの供給役をこなしていたが、現チームではピッチ中央に構え、攻撃を構築している。

 1試合平均のパス本数が44本から61本へと上昇しているのはその役割の変化の何よりの証だ。ちなみに13-14シーズンのチームは他のMF陣もガビ(54本)、チアゴ・メンデス(51本)、マリオ・スアレス(46本)といずれも今シーズンのコケの領域には及ばない。

 また13-14シーズンのチームは、戦術的ファウルの名手だったガビを筆頭にゴディン、ミランダ、フィリペ、ビジャ、チアゴと歴戦の勇士揃いで、タイトなプレーが際立った。その中で、アルダ・トゥランが攻撃にアクセントを加える役割を果たしていたが、現チームの主力はコケをはじめトマ・ルマール、ジョアン・フェリックス、アンヘル・コレア、カラスコとテクニシャン揃い。その煽りを受けてルーカス・トレイラ、ジョフレ―・コンドグビア、サウール・ニゲスといったタフさを持ち味にした選手は脇役にとどまっている。
 

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