加速する若手の海外移籍――「欧州は実績を作るまで待ってくれない」斉藤光毅・代理人が語る、選手とクラブへの提言

2021年02月15日 サッカーダイジェストWeb編集部

代理人による選手獲得競争は激化の一途をたどる

冬の移籍市場で欧州に新天地を求めた日本人選手たち。写真は左から齊藤未月(ルビン・カザン)、斉藤光毅(ロンメル)、橋岡大樹(STVV)。写真:サッカーダイジェスト

「ワールドカップ(W杯)やチャンピオンズ・リーグ(CL)に出て、優勝することが夢。そこに向かって努力したい」

 これはベルギー1部・シントトロイデン(STVV)に期限付き移籍した橋岡大樹が4日の入団会見で発言したコメントだ。

 壮大な夢を描くのは彼だけではない。今の若い日本人選手たちは「CLに出たい」「マンチェスター・シティやリバプールで活躍したい」と当たり前のように口にする。日本がW杯に6大会連続で出場し、香川真司(PAOK)や内田篤人(JFAロールモデルコーチ)らがCLの大舞台で戦う姿を間近で見てきた10~20代のタレントがそう考えるのも不思議ではない。
 
 とはいえ、香川がわずか2年でマンチェスター・ユナイテッドからボルシア・ドルトムントに復帰し、リバプールに赴いた南野拓実が1年でサウサンプトンにレンタルされるなど、現実はそう甘くない。EU圏外から赴く日本人選手が欧州サッカー界で最高峰レベルに到達しようと思うなら、実力と結果、運を引き寄せなければ難しいだろう。

 そんな厳しい現実を選手に伝えるのが仲介人(代理人)という存在である。2月13日現在で、JFAの仲介人リストに登録されているのは343人。2015年3月までのFIFA旧規約では難易度の高い試験を受け、資格を取得する必要があったが、同年4月以降は仲介人登録を行なったうえで、初回10万円、以降年3万円の登録費を払うだけで、誰もが簡単に仕事ができる仕組みに変更された。これにより仲介人の数は急増。U-17やU-20、U-23といった年代別代表活動の場には仲介人が次々と押し寄せ「金の卵」を発掘しようと躍起になっており、彼らの選手獲得競争は激化する一方だ。

 その仲介人の中でも、過去に海外移籍を複数人成功させ、実績やノウハウ、ネットワークの部分でリードしていると言われているのが、中村俊輔(横浜FC)や長谷部誠(フランクフルト)らを手掛けた株式会社スポーツコンサルティングジャパンの佃ロベルト代表、小野伸二(札幌)、内田篤人らを手掛けた株式会社Sarcleの秋山祐輔代表らだ。

 さらに先月、ベルギー2部・ロンメルへ赴いた斉藤光毅の移籍に関わった株式会社グロボル・フットビズ・コンサルティングの柳田佑介代表もそのひとりと言える。東京大学卒業後、日本貿易振興機構で日本企業の海外ビジネス支援に従事した彼は2008年に仲介人に転身。ドイツ・デュッセルドルフに拠点を置きながら実績を積み重ね、2018年に同社を設立した。現在は選手・指導者含めて20人以上と契約。海外移籍に関しては前述の斉藤光毅に加え、過去には酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)のブンデスリーガ・ハノーファー、太田宏介(パース・グローリーFC)のオランダ1部フィテッセ、中村敬斗(オーストリア2部・FCジュニアーズ)のオランダ1部・トゥベンテへの移籍も手掛けた。
 

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