【バイタルエリアの仕事人】vol.2 市川大祐|サイドのスペシャリストから見た最重要エリアの活かし方、防ぎ方とは?

2021年02月11日 渡邊裕樹(サッカーダイジェストWeb編集部)

「バイタルエリアへ“角度のある”斜めに入れるパスを意識していた」

古巣清水で指導者の道を歩んでいる市川氏。サイドプレーヤーからみた「バイタルエリア」について語ってくれた。(C)SOCCER DIGEST

 サッカーにおける攻守の重要局面となる「バイタルエリア」。ゴールや失点に直結する"勝負の肝"となるスペースをいかに攻略するか、死守するかは、多くのチームにとって不偏のテーマだろう。そんな「バイタルエリア」で輝きを放つ選手たちのサッカー観に迫る新連載のインタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第2回はSBでクロスの名手、元日本代表の市川大祐氏だ。

 市川氏から見たバイタルエリアは「多くの駆け引きが生まれる場所」だという。攻撃としては効果的に使いたいエリアで、守備としてはそこにボールを入れさせないためにどう守るか。右SBを主戦場に清水エスパルスのジュニアユースからトップチーム、そして日本代表へと駆け抜けた、右サイドのスペシャリストが語るバイタルエリアとは――。

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 サイドのプレーヤーとして大事なことは、1対1の局面で負けないこと、いかにサイドを崩して突破していくのかということが大前提となります。そのなかで決定機を作り、得点を生み出すために有効な手段として、バイタルエリアの使い方があります。サイドバック(SB)として攻撃時に常に意識していたのはそこに"角度のある"斜めに入れるパスでした。

 このパスの有効性は、角度をつけることで、受けた選手が次のプレーに移るための身体の向きがゴールに向かいやすく、周りの選手のサポートも入りやすいという利点があります。

 当然、相手のサイドハーフや、ボランチがスペースを消してくるので、上手くパスを繋ぐにはゴロだけでなく、立体的な視点が必要で、相手の頭越しに入れるなど工夫を凝らしました。下で通らなければ、FWの胸、もも、足下などに入るような浮き球や、スペースに落とすようなボールというのを意識して、常に相手と駆け引きをしていました。
 
 このパスには仲間の協力も必要です。特長を把握し合い、シチュエーションやその日のコンディションなども意識して、お互いのストロングを引き出し合えるとゴールに繋がるような良いプレーが生まれます。

 一緒にやってきたなかでは、岡崎慎司なんかはボールを受ける前の駆け引きやボールを呼び込む動きも上手いので、パスを出すイメージは作りやすかったですね。さらに、ディフェンスラインの裏を取って背後に引っ張り、バイタルを空けるような動きもできるので、他の選手が走り込んできてミドルシュートなどの攻撃パターンも作れました。

 ゴール前の良い位置だからといって、そこに留まっていると相手ディフェンスに対応されてしまいます。必要なのは流れのなかでの動き出しと、一発でディフェンスラインの裏を取れる怖さや、ポストプレーができる力強さなどを持ち併せていることです。岡崎以外ではフローデ・ヨンセンもターゲットとしても非常にパスを入れやすかったです。
 

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