シーズン半ばに監督&SDを解任…約280億円の投資を受けたヘルタ・ベルリンの大型補強は、なぜ失敗したのか?【現地発】

2021年01月30日 中野吉之伴

「これはクレイジーなアイデアではない」

23日のブレーメンに敗れ、天を仰ぐジョン・コルドバ。監督とSDの解任が発表されたのは、その翌日だった(C)Getty Images

「プロジェクト・チャンピオンズ・リーグ」

 ヘルタ・ベルリンが掲げたスローガンは、うたかたの夢だったのだろうか。首都クラブとしてチャンピオンズ・リーグを目指すと意気込みを見せていたのは1年ちょっと前のことだ。しかしこの目標を掲げたブルーノ・ラッバディア監督、ミヒャエル・プレーツSDは1月24日に解任となり、ヘルタは新しいスタートに踏み出すこととなった。

 かつて、細貝萌や原口元気がプレーしていたヘルタは、ドイツの首都ベルリンを本拠地とする。そのクラブと、投資会社テナー・ホールディングは戦略的パートナーシップを締結し、二度に分けて2億2400万ユーロ(約280億円)を支払う形で、同社はヘルタの49.9%の株式を獲得していた。しかも、これで投資は終わりではないという。

 テナー・ホールディング社の会長ビントホルストは、「制限を設けるつもりはない。必要とあれば自分たちの目的を達成するためにさらなる手段を講じるつもりだ」と話していた。さらには「これはクレイジーなアイデアではない。たとえ巨額の投資額になったとしても、最終的にそれ以上のものを回収できるという経営的なロジックで考えられたものだ」という説明を加えた。
 
 ブンデスリーガのみならず、欧州、いや世界中のクラブが新型コロナウィルスの影響を受けている中、巨額の支援を変わらず受けられる。これについて、ヘルタのゲーゲンバウア―会長が「非常にうれしく思う。素晴らしい一歩だ。ヘルタの財政面は過去比較できないほど強固なものになっている」と思わず喜びのコメントをした気持ちはよくわかる。

 ただ、クラブ運営の成功のためにはスポーツ面での成功と経営面での安定の両軸がなければならない。クラブの収益を考えたときに、スタジアムでの集客のほか、テレビ収益(放映権ほか)、スポンサー収益の影響はとても大きい。プロジェクトが大きく魅力的であれば、人も集まりやすくはなる。ただ、あくまでも、それがうまくいった場合だ。プロジェクトを進めながらヘルタというクラブが持つスポーツ面での方向性とブランド力が一緒に高まっていかなければ、投資額を回収できるようにはならないだろう。

 ブンデスリーガには50+1という規則がある。どんな投資家も50%以上の権利を手にすることができない。それがブレーキとなり、投資家や大型スポンサーの要求を最後のところで跳ね返すことも、理論上はできる。ただ、そのあたりは限りなくグレーなのが実情だ。

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