"武藤狂想曲"の幕開け――この喧騒を力に変えられるか

2015年04月09日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

チェルシー以外のオファーが舞い込む可能性も十分にある。

プロ2年目の今季も開幕から好調を維持。周囲からの注目度が高まるなか、エースとしてチームを優勝に導けるか。今こそ真価が問われる。 (C)SOCCER DIGEST

 3月上旬、FC東京のFW武藤嘉紀のもとに、プレミアリーグの強豪チェルシーから完全移籍の正式オファーが届いた。移籍金は推定400万ポンド(約7億1000万円)で、仮に成立した場合はJリーグに所属する日本人選手の海外移籍で、過去最高額となる。
 
「素晴らしいチームからオファーをいただいたことを光栄に思います」と本人が話すように、チェルシーは正真正銘のメガクラブだ。
 
 過去の栄光にすがりつく元名門でも、ここから急成長するだろう新興勢力でもない。昨季までプレミアリーグ優勝4回、チャンピオンズ・リーグ制覇1回。しかも監督は世界的な名将ジョゼ・モウリーニョで、今季のプレミアリーグで堂々と首位を走る"旬"なチームである。香川真司(現ドルトムント)が、マンチェスター・ユナイテッドからオファーを受けて以来の衝撃と言えるだろう。
 
 案の定、チェルシーからのオファーが公になった翌日の4月9日には、予想を上回る多くの報道陣が小平グランド(FC東京の練習場)に詰めかけた。クラブスタッフのひとりが「これだけ集まったのは、もしかしたら(09年の)ナビスコカップ制覇以来かもしれない」と言うほどの盛況ぶりだった。
 
「自分自身はまだなにも決めていない。今はFC東京の1stステージ優勝に貢献したい。まずはJリーグ優勝に集中したい」
 
 4月8日にそう話した武藤は、自らが答を出すまで静かに見守ってもらいたいのだろうが、"旬"な男を周囲が放っておくはずがない。
 
 おそらく、決断の時を迎える今夏まで"武藤狂騒曲"は続くだろう。チェルシー以外のオファーが舞い込む可能性も十分にあり、そうなれば注目度はさらに高まる。
 
 いずれにしても、気になるのは武藤のメンタル面だ。
 
 プロ1年目の昨季は取材対応に追われ、身体と心のバランスが崩れた時期があった。「去年(11月)のオーストラリア戦の頃が一番きつかったですね。体重が減って、胃腸炎にもなって……」と、3月の本誌インタビューでもそう答えている。
 
「でも、今はもう大丈夫です。だいぶ慣れて身体と心のバランスは取れています」と同インタビューで笑顔を見せた武藤も、昨季の比にならない喧騒のなか、果たして平常心でプレーできるのだろうか。
 

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