【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の十三「守備のマネジメント」

2015年04月09日 小宮良之

日本には、守備の問題点が少なくない。

ウズベキスタン戦の後半、ハリルホジッチ監督は中央の守備を安定させるためにDF水本をアンカーとして投入。チームの弱体部を補強した、迅速かつ適切な采配だった。 (C)SOCCER DIGEST

 ウズベキスタン戦後の記者会見、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は大勝で饒舌になっていたのだろう。ブラジル・ワールドカップのコロンビア戦における、日本の戦術マネジメントの破綻にまで言及している。
 
「(2014年ワールドカップの)コロンビア戦を思い出してほしい。信じられないほどナイーブな試合だった。全員が(守備を無視して)ペナルティエリアの中に入り、後ろにはほとんど誰もいなかった。あんな戦いは二度と見たくはない」
 
 この日、ハリルホジッチの守備マネジメントは柔軟でしたたかだった。バックラインの中央付近が空中戦に強い相手アタッカーに押され気味になっていたため、また自軍のボランチが動き回ってCBの前がオープンになっていたことで、すかさず動いた。後半にCBの水本裕貴をアンカーとして起用。失点を防ぐため、確実に弱体部を補強した。"後の先をとる"という意味で、相手に対処する動きは迅速かつ適切だった。
 
 その采配は絶賛されたが、ハリルホジッチは魔術師などではない。
 
 共著「日本サッカースカウティング127選手」では、スペイン人スカウトのミケル・エチャリが、継続してスカウティングしている日本代表についてこう評している。
 
「09年の岡田監督の率いる日本代表は、両SBが左右同時に駆け上がり、ダブルボランチまでが攻めに回り、強引に得点を狙っていた。"残り数分で得点を入れないと負ける"というわけでもないのに、一斉に攻撃を仕掛ける様子は正気の沙汰ではなかった。南アフリカ・ワールドカップの岡田監督は、最終ラインの前に阿部勇樹をアンカーとして置くことにより、守備面の問題をどうにか解消していた」
 
 守備マネジメントの低さは、日本サッカーの"体に染み付いた"欠点と言える。6、7人もの選手が敵ペナルティエリアに入るなど過剰な攻撃参加(攻撃への強迫観念)に始まり、CBの強度不足、CK時の守備のマークの緩さ、危険なボールロスト、カバーリングを含めた攻撃をしている時の守備の準備不足(カウンターへの備えがない)など、守備の問題点は少なくないのだ。

次ページ長所と短所を突き詰めていくのはこれから。

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