0-2で後半AT突入…優勝候補・昌平を絶体絶命の危機から救った篠田兄弟の2発!「俺らでやってやるぞと…」【選手権】

2020年12月31日 長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

弟の追撃弾に触発された兄も…

土壇場で同点弾を決めた篠田大(9番)。昌平を絶体絶命のピンチから救った。写真:浦 正弘

[高校選手権1回戦]昌平2(8PK7)2高川学園/12月31日(木)/NACK

 絶体絶命の淵に追い込まれた優勝候補が、アタッカー兄弟ふたりの活躍で息を吹き返し、PK戦をものにして2回戦へと駒を進めた。

 前回大会8強でプロ内定者4名を抱える昌平は、優勝候補の一角に推される存在だ。しかし、対する高川学園も実力校。序盤の不安定な時間帯をうまく突かれ、前半7分にはセットプレーから先制点を許してしまう。その後は圧倒的なポゼッションで昌平が主導権を握るものの、相手の粘り強い守備の前にゴールが奪えない。

 後半も押し込むものの得点を奪えずにいると、後半29分には高川学園にスピーディなカウンターから清永和暉(3年)に2点目を許してしまう。昌平は猛攻を仕掛けるものの、相手の巧みなディフェンスを崩しきれず、時間は過ぎていくばかり。優勝候補の命運も尽きたかに思われた。

 しかし、ここで昌平を救ったのが後半26分と同30分に途中出場したMF篠田大輝(2年)、MF篠田翼(1年)の兄弟ふたりだ。同40分、まずは鹿島入団内定の10番・須藤直輝(3年)からのラストパスを受けた弟・翼が狙いすましたシュートでゴール左隅に突き刺すと、アディショナルタイムの4分過ぎだった。

 須藤がファウルでFKを獲得し、「審判からもラストだと言われた」(須藤)という文字通りのラストプレー。10番のキックに飛び込んだのは、「翼が決めたから次は俺でしょ」と思っていたという兄の大輝だった。鮮やかなドンピシャヘッドでネットを揺らす。劇的な同点弾で試合をPK戦に持ち込むと、これも接戦となったものの昌平が8-7で制し明暗が分かれた。

 チームを絶体絶命のピンチから救った篠田大は「交代する前から俺が点を決めてヒーローになるんだと言い聞かせていた。念じるじゃないけど、俺のところに来いとずっと思っていてゴールしか見えていなかった」と同点弾の場面を振り返った。また、先に交代出場でピッチに入っていた兄は、後から入った弟に対して「『俺ら兄弟でやってやるぞ』と声を掛けていた」と明かす。

 前回大会では、1年生ながら大会メンバー入りし、ゴールも決めた篠田大。この試合では弟・翼とともに兄弟アベック弾となったが、これが「公式戦では初めて」の経験だという。兄弟仲はといえば、「中学の頃はケンカもしたけど、高校に入ってトップでプレーするようになってからは、買い物に行ったりコミュニケーションをとって兄弟の絆というか、つながりを深め合ってきた」と、昌平の一員として今大会への想いを共有してきた。

「自分がヒーローになるくらいの気持ちで日本一まで行きたい」と確固たる決意を見せた2年生ストライカー。2回戦は、やはり強豪校の京都橘との対戦だが、弟とともに救世主となった篠田兄弟のさらなる快進撃に注目だ。

取材・文●長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)
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