U-20W杯中止…無情の現実に翻弄された選手たちがピッチで示した本質「目標はもっと高いところに…」

2020年12月28日 安藤隆人

FIFAは2021年に開催予定だった男女のU-17、U-20W杯の中止を決定

U-19日本代表の主力のひとりと目された西川(左)と斉藤(右)。来年のU-20W杯中止の発表に、「頭が真っ白になった」(西川)と素直な思いも。写真:安藤隆人

 あまりにも無情でありながらも、非常に意義ある1日だった。

 12月25日昼、関東大学選抜とのトレーニングマッチを午後に控える中、U-19日本代表の選手たちに告げられたのはU-20ワールドカップ(W杯)中止という衝撃的な事実だった。

「言われた瞬間は頭の中が真っ白になった」と前回のU-20W杯ポーランド大会に出場したFW西川潤が正直な心境を口にしたように、一番の目標を失ったショックは計り知れないものがあった。

 新型コロナウィルスの世界的なパンデミックの影響を受け、スポーツの世界は大きな打撃を受けている。なかなか終息に向かわない状況下で、FIFAが下したのは2021年に開催予定だった男女のU-17、U-20W杯を行なわないという判断だった。

「実は夜中にそのニュースが来ていたのですが、私はもう就寝していたんです。朝起きて寝ぼけている状態で幾つかメッセージが来ているのを発見して、そのニュースを見て一気に目が覚めました。もちろんショックもありながら、これは我々が何をすべきか、このFIFAの決定によって、U-19の活動がどこまでできて、どこからができなくなるのか。冷静に考えました」

 こう心境を口にした影山雅永監督はすぐに反町康治技術委員長、内山篤団長とこの話題について話し合った。朝食会場ではネットの情報などで気づいている選手もいたが、その話題に触れず、昼食の前の全体ミーティングでこの事実と今後の説明を行なった。

 この代表が目指すメインターゲットが突然失われたことで、この代表の競争とチームづくりの意義、それ以上に今現在進行形で行われている代表合宿の意義はどうなるのか。混乱という言葉がぴったりの状況だった。

 だが、ひとつだけはっきりしていることは、大会がなくなったからと言って、日本サッカーの強化・育成という代表活動の理念は変わらない。すぐに影山監督を始めとした協会スタッフはこの代表の立ち位置、日本サッカーとしての立ち位置を協議し、確認をした。

「いくら世界大会がなくなってもこの育成の流れを止めてはいけない。先日行ったU-18日本代表合宿のようにW杯に当たらない年代も日本代表として集めて、年代を途切れさせることなく強化を継続することが大事。ましてや、まだU-19アジア選手権もなくなったわけではない。このまま続けていこうという話し合いを持てたことで、僕も背中を押してもらえた気がしました」(影山監督)

【U-19日本代表合宿PHOTO】西川、斉藤も躍動。アジア選手権に向けレギュラー奪取を目指し選手たちが練習試合で猛アピール

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