東福岡2冠メンバーが故郷クラブの長崎へ。早大ボランチ鍬先祐弥が思う内定が遅れた理由と進化への鍵

2020年12月14日 安藤隆人

誰もがプロに進むだろうと信じたタレント。4年生になってもオファーが届かなかった

早大のボランチ鍬先がJ2長崎へ加入内定。念願のプロ入りを掴んだ。写真:安藤隆人

 12月10日、早稲田大のボランチ鍬先祐弥のV・ファーレン長崎入り内定が発表された。鍬先と言えば東福岡の印象が強いが、長崎は鍬先にとって生まれ故郷でもある。長崎南山中から東福岡高に進み、高2から東福岡伝統の4-1-4-1のアンカーを任され、攻守の要として君臨。インターハイ優勝、選手権優勝の2つのタイトルを手にした。

 同級生の小田逸稀、高江麗央(共に町田ゼルビア)、藤川虎太朗(ジュビロ磐田)が高卒プロに進む中、鍬先もFC東京の練習に参加をするなどプロ入りの可能性もあった。

 だが、「正直、まだ自分に自信がなかった。関東大学リーグのレベルは高いと聞いていたので、そこで4年間努力をして自信を積み重ねてからプロになりたいと思った」と熱心な誘いを受けていた早稲田大に進学。

 2年時から攻守のバランサーとして頭角を現わし、関東大学リーグ1部優勝に貢献。個人的にも全日本大学選抜に選ばれるなど、誰もが大学卒業後はプロに進むだろうと思うタレントだったが、4年生になってもなかなかオファーが届かなかった。

「プロになる覚悟と自信もついてきて、『絶対にプロになる』という覚悟は固まりました。でも、キャンプの参加の話はひとつもなくて、今年の3月にJ1クラブの練習に参加することは出来たのですが、明確な返答がなかった。他の選手が決まっていく中で(新型コロナウィルス感染症拡大の影響で)自粛期間に入ってしまい、他の練習参加の話も実現できなくなってしまった。リーグ戦が再開してからはいつでも(プロの練習に)参加できるように準備していたのですが、それでもなかなか声がかからない現実に正直、『いよいよやばいぞ』と精神的に追い込まれました。でも、いろいろな思いはあったのですが、リーグ戦優勝に向けてチームの勝利に貢献しなきゃと懸命に自分を奮い立たせてもいました。チームが勝てば、必ず自分の評価も上がると信じていました」(鍬先)

 焦りと不安、そして絶対にプロになるという強い想い。様々な感情が入り混じりながらも、彼は自分を信じ、早稲田大の攻守の要として献身的なプレーと、時折見せる果敢な攻撃参加でチームのために力を発揮した。

 その姿に一足早く清水エスパルスに加入が内定した1学年下のFW加藤拓己は、「クワは本当に努力家。常に冷静で周りに気を配りながらも、自分の成長のために本当に努力をしている姿をずっと見てきた。『こういう選手にこそ、プロに行ってほしい』と思わせてくれる。なので、なかなか声がかからない状況は僕も歯痒かった」と語ったように、多くのチームメイトが「なんとかプロに行ってほしい」と願うほど、彼の姿勢は真摯だった。

【PHOTO】2021Jクラブ、主な「高校&大学・新卒内定プレーヤー」をチェック!

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