「井の中の蛙じゃないけど」ベトナムに旅立つ39歳・松井大輔の貪欲な“チャレンジ”

2020年12月04日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「自分らしいプレーを思い起こしたい」

ベトナムのサイゴンFCに完全移籍。海外挑戦はこれで5か国目となる松井は「チャレンジすること。それが大切」と語る。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 12月4日、ベトナムリーグ1部のサイゴンFCへの完全移籍を発表した松井大輔が、オンラインでの移籍会見を開いた。

 移籍の経緯については、3週間ほど前にクラブを通じて獲得の興味を示されたという。即断はしなかったが、ベトナムの経済的な発展、東南アジアでの高まるサッカー人気、オーナーが提示した明確なビジョンなどを考慮して、移籍を決めた。

 松井自身、「まさかもう一回、海外に行けるとは考えていなかった」だけに、今回のオファーに驚きを隠さない。今季は怪我もあり、横浜FCでは思うように出場機会を得られず、「チームに貢献できなくて申し訳ない」という気持ちがある一方、「こうやってまた挑戦できる場をもらえることに、すごく感謝しています」と心境を明かす。

「必要とされるのは、人間としても、プレーヤーとしても、すごく嬉しいこと。がっかりさせたくないし、サッカー選手として、それプラス、いろんなものに対してベトナムに貢献したい」

 これまでフランス、ロシア、ブルガリア、ポーランドでプレーしてきた。海外挑戦はこれで5か国目。改めて、海外でプレーすることの意義について訊けば、次のように答えた。

「いろんな国を見て、そこにいろんな国籍の人がいて、幅が広がると思う。日本では経験できないことがある。井の中の蛙じゃないけど、僕たちは島国の人間だし、違うところに行って、違うものを見ることが、僕は大事だと思っている。

 いろんなものを体験しないと、なにも分からない。行った者しか、そこでの経験はできない。その経験が財産になると思っているので。たとえ失敗しようが、怪我しようが、何しようが、別にそれに対して悔いは残らない。行くことに意義がある。チャレンジすること。それが大切だと僕自身は考えています」

 39歳になっても、小さくまとまるつもりはない。経験豊富なベテランは、堂々と"チャレンジ"というフレーズを口にする。

「この年齢になりましたけど、年齢と経験を重ねて、また違うものが見えたりする。それが監督の目線だったり。B級ライセンスを取りましたけど、そういう目線で、いつか自分が動けなくなったとして、選手にどういうふうに教えたらいいのか、とか。ベトナムやアジアで、子どもたちに教えたりとか、そういうこともできるかもしれない」

 好奇心が赴くままに、様々な事柄に目を向けて、知見を広めたいと考えているようだ。
 
 もちろん、まずはピッチの上で充実の時間を過ごしたい。

「試合に出続けることが大事。この年齢になってくると、試合に出ていないと身体もちょっと変わってきて、筋肉的にも難しくなってくる」

 コンスタントに試合に出場して、身体を作っていく。「トップ下があれば、トップ下をやりたいけど。前のほうでもう一回できれば、楽しそうかなと思います」。

 磨き上げた極上のスキルを存分に発揮して、「自分らしいプレーを思い起こしたい」。ベトナムの地でも、持ち前の創造性あるプレーで魅せてくれるはずだ。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

【PHOTO】松井大輔のキャリアを厳選ショットで振り返る!2002-2019
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