【日本代表】金田喜稔がチュニジア戦を分析|野心とプライドを呼び起こした“ハリル・マジック”

2015年03月27日 サッカーダイジェスト編集部

一番の変化は、「縦への意識」と「守備へのアプローチ」

5年ぶりに代表復帰を果たした永井。攻守におけるハードワークでリズムを生み、前体制からの新戦力という意味で一番の収穫だったと思う。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 監督が代われば、標榜するサッカーも変わる。「変化」を前提に、そこに選手が前向きに取り組んだ結果、2-0で勝利したという事実が持つ意味は大きい。選手の求心力になるだけでなく、サポーターを含めハリルホジッチ監督に対する期待感は上がったのだから、"最高のスタート"と言ってもいいだろう。

【日本代表|PHOTOギャラリー】日本 2-0 チュニジア

 目を引いたのは、選手間のディフェンスに対する意識の高さだ。相手のボールホルダーに対するファーストディフェンダーのアプローチが、これまでの基準の約20センチは近い位置から奪いに行くのが90分間徹底されていた。ボールを奪う回数も、過去の日本代表と比べても多かったのではないかと思う。
 
 攻撃面では、「縦」への意識が感じられた。チュニジア戦は連動性に欠け、決してスムーズではなかったが、ボールマンは失敗を恐れず縦にパスを出そうとしていたし、前線の選手もそれを受けようとする動きが見られた。1タッチ、2タッチのプレーで相手を振り切る形は、監督が「縦」の意識を植え付けたからこそである。
 
 ハリルホジッチ監督は、自身が実際に視察した武藤、永井、川又をスタメンで起用した。コンビネーションが整っていないなかで先発した選手は苦しかっただろうが、正直なところ前半で勝とうとは考えていなかったとワシは思う。前半のメンバーは全員がディフェンスをさぼらずにハードワークする選手だが、パンチ力には少々欠ける。本当の狙いは、フレッシュな顔ぶれが厳しい環境でどれだけできるのか、「適応力」と「野心」を試したかったのだ。

 それに応えるように、永井は川又との関係で縦パスのコースに入りながらボールを受けるなど、3番目の選手として攻撃に絡んだ。前半に主導権を握っていたのは日本の右サイドであり、得点こそ生まれなかったものの、上手く機能していた。ワシが個人的に永井に要求するレベルは高いが(自分が活きる仕掛けと、周りの選手を活かす能力を伸ばしてくれればもっと機能する)、スプリントを活かしながら献身的にディフェンスもこなしていたし、リズムを生んだ部分は自信を持っていい。今回巡って来たチャンスを活かすきっかけの試合になったと思う。
 

次ページ攻守の共通理解を次戦でも継続できるか。

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