【選手権】7年ぶりの県内黒星からの逆襲…赤い彗星・東福岡はいかにして冬の舞台へ返り咲いたのか?

2020年11月30日 松尾祐希

前回予選では決勝で敗退。新人戦でもベスト4で敗れる

チームを統率するキャプテンの上田。2年ぶりの選手権出場に導いた。(C) K.Yamaguchi

 冬の選手権に赤い彗星が2年ぶりに帰ってくる。

 11月14日に行なわれた高校サッカー選手権の福岡県予選決勝。九国大付と対戦した東福岡は開始早々にPKを与えながら、相手のミスで失点を回避し、以降はペースを掴んで伝統のサイド攻撃で押し込んだ。ゴールは試合終了間際にMF遠藤貴成(3年)が決めた1点のみ。だが、どんな内容であれ勝利に変わりはない。試合終了のホイッスルが鳴ると、感情を爆発させて喜びを噛み締めた。それもそのはず。過去3度の優勝を誇る東福岡にとって、この1年間は一からのスタートになったからだ。

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 今から1年前。東福岡は高校サッカー選手権の県予選決勝で、筑陽学園に0−1で敗れた。県内では実に7年ぶりの黒星。2012年10月27日に行なわれた同大会の準々決勝で筑陽学園に敗れて以来の出来事に、選手たちはもちろんスタッフも肩を落とした。

 来年こそは――。誰もが並々ならぬ意欲を持って、新たなスタートを切ったその矢先だった。1月下旬に行なわれた県新人戦の準決勝で九国大付にPK負けを喫してしまう。7連覇中のチームにとって記録が止まっただけでなく、上位2校に権利が与えられる九州新人戦の出場権を14年ぶりに逃した。

 当時のチーム状況について、志波芳則総監督はこう振り返る。

「出来ることと出来ないことをスタッフが把握できていなかったかもしれない。相手も予想以上に我々をリスペクトしてきた。準決勝の九国大付戦も先制したのに追い付かれてPK負け。勝つためには何か足りないんだなと思わされた。足りないところはたくさんあった。ディフェンスラインのバランスは悪かったし、攻撃は今一つ。当時はキャプテンも決まっていない状態で、チームの核もいなかった」

 どうやってチームを強化していくか。スタッフが巻き返しを図るために思案していると、今度は別の問題が起こる。新型コロナウイルスの感染拡大だ。他校と同様に3月から学校は休校となり、全体練習ができなくなったのだ。

 6月に活動を再開したが、夏休みの県外遠征は見送りに。インターハイの中止、リーグ戦の開幕延期もあり、新チームが立ち上がってからの半年間に強豪校とほとんど戦えなかった。「例年であれば、春先にサニックス杯で青森山田などと対戦し、リーグ戦でも厳しいゲームを経験できる。でも、今年はそれが叶わなかったから、強化が難しい。森重(潤也)監督も、僕もある種の不安は持っていましたね」とは志波総監督の言葉。全国レベルを知る経験や1点を争う勝負の重みを感じ取れず、強化の面では大きな痛手となった。
 

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