史上最速の戴冠劇はなぜ可能だったのか? 圧巻の強さを誇った今季の川崎を読み解く3つのポイント

2020年11月26日 江藤高志

4-3-3への変更は“ワイドなアタッカー”を活かすため

2年ぶり3度目の優勝は、4試合を残しての史上最速V。川崎は圧倒的な強さでシーズンを駆け抜けた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 川崎フロンターレが4試合を残してJ1リーグ史上最速で頂点に立った。優勝を決めた25日のG大阪戦は今季の強さを象徴するような圧巻のパフォーマンスを披露。家長昭博のハットトリックなどで5-0の大勝を飾っている。なぜ今季の川崎はここまで独走できたのか。

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■戦術変更
 2020年のJリーグを圧倒したフロンターレの強さの理由が4−3−3の導入にあるのは論をまたない。前線からの守備にしても攻撃にしても、前方に人数をかけやすくなったこのシステムが連勝街道を支えたと言えるだろう。

 守備のバランスについてはシーズン中に調整を施したが、再開後しばらくはボール支配率の高さでカバー。選手個々の対応力で難しい場面も乗り切った。2017年の就任から4季目となる鬼木達監督は選手たちにハードワークを求め続け、日々対人能力を磨いてきた。だからこそ数的同数になったとしても川崎の選手たちは強さを見せる。

 昨季王者の横浜も取り入れた4-3-3システム。最終的に導入を決めたのは、今の川崎にこのシステムに適応できる選手がいたからだと鬼木監督は説明する。

「大事なのは自分たちの選手にどれだけ当てはまるか。選手がいないとできないことなので」

 ポイントはワイドアタッカーだったという。

「今年はワイドなアタッカーが多かです。そのあたりで決断したというのはあります」

 左右のウイングについては、まさにタレント豊富だ。序盤に点を重ねた長谷川竜也は怪我による長期離脱があったが、その穴を齋藤学、三笘薫が埋める。右サイドには家長昭博に続き旗手怜央が控える。そして攻守でハードワークできる選手たちの中でも特に大卒ルーキーふたりの活躍が光った。

 シーズン当初から出場機会を増やした旗手は、チーム戦術を理解するサッカーIQの高さで欠かせない選手に成長。得点機に関わる多さと、複数のポジションをこなす器用さでチームに貢献した。

 そして三笘のインパクトも見事だった。局面を一気に打開するドリブルはリーグ随一の水準で、サイドアタッカーとして相手に脅威を与えた。また、29節終了時点で12得点と、新人選手の得点記録更新が期待されている。ある意味規格外の活躍を見せているといえる。

 その戦術変更を下支えしたコーチ陣にも着目が必要であろう。今季からトップチームに加わった寺田周平、戸田光洋はもちろん、選手の体調を管理した篠田洋介フィジコを始めとするメディカルチームの尽力も並大抵のことではなかった。

 

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