ルーキー三笘薫はなぜ川崎優勝の原動力となれたのか? 大ブレイクのカギは筑波大での4年間にあり!

2020年11月26日 竹中玲央奈

1年次からピッチで示した大きな存在感

優勝を決めたG大阪戦でも2アシストの活躍を見せた三笘。筑波大時代(右)の成功体験によって大きく飛躍した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/左)/竹中玲央奈(右)

 圧巻の強さを見せた川崎フロンターレが、2020年のJ1リーグを制した。4試合を残しての史上最速での優勝だけに、2ステージ制だった02年に初の"完全優勝"を果たしたジュビロ磐田のごとく語り継がれるだろう。その中でも最も大きなインパクトを残した選手と言えば、大卒新人のドリブラーと言っても異論はないはずだ。

 ただ、彼の活躍について「サプライズか」と問われれば、否である。

 三笘は2016年に、川崎U-18からトップチームへの昇格を断り、成長の舞台と位置づけて筑波大蹴球部に進む道を選んだ。強化部でスカウトを務める向島建氏は「当然、4年後に戻すつもり」で大学へ送り込んだのだが、4年間で彼は"期待以上"の成長を遂げて帰ってきた。そう言えるのは、「プロでもやれるな」と誰もが確信できるプレーを、大学サッカーのピッチで示し続けてきたからだ。

 筑波の門を叩き、三笘はすぐさまトップチームのメンバーに名を連ねた。主に途中出場で"ジョーカー"的な役割を果たし、短時間でもピッチに立てば味方も相手も、そしてもちろん観衆をも驚かすプレーを魅せる。天皇杯茨城県予選の決勝で流通経済大と対戦した際にも怖がることなくボールを間で受けて前を向き、接近戦で相手の逆を突いて交わすドリブルを、同県のライバルを相手に淀みなく発揮していたのが印象深い。敵が足を踏み出した瞬間を逃さず股を通すプレーは当時からの十八番で、この試合でも食いついてきた相手を見事に交わし、ファウルと警告を誘った。1年生の三笘に対し、イエローカードと引き換えにたまらず止めたのは、現在は松本でプレーする塚川孝輝だった。

 その年の末、2016年に筑波が全日本大学サッカー選手権を制覇した際にも原動力となったのだが、この大会の準決勝で3点目を決めたのは途中出場の三笘だ。この時の対戦相手の阪南大には川崎U-18時代を共に過ごし、現在はトップチームでプレーする脇坂泰斗がいた。先輩に引導を渡す痛烈な一撃を見舞った訳だ。

 そして2年次には、彼の名はあるビッグイベントによって広く知れ渡ることになる。筑波大がJ3のY.S.C.C、J2のアビスパ福岡、J1のベガルタ仙台を破りベスト16に進出した2017年の天皇杯だ。とりわけ、全国中継のあった仙台戦で見せたロングドリブルでのゴールは圧巻で、そのパフォーマンスは大きなインパクトを与えた。

「中継もされるし、自分の名を広めるためにも良い機会。自分のプレーでチームを勝たせるようにというのは意識しているので、J1相手にもチャレンジしていきたい」
 試合前にこう宣言していた三笘は、見事に有言実行を果たしたのである。

【動画】ガンバ戦、三笘薫が技ありの股抜きからチャンスメイク!

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