「手応えがない年だった」県新人戦8強校が全国レベルの優勝候補を撃破!ルーテル学院が選手権切符を掴めたワケ

2020年11月25日 松尾祐希

絶対的な優勝候補はスーパープリンスリーグ九州を制した大津だった

4年ぶりの選手権出場を掴んだルーテル学院。県予選を3試合連続PK戦で勝ち上がった粘りを全国でも発揮できるか。写真:松尾祐希

 熊本県予選の優勝候補筆頭は大津だった。春先の九州新人戦は圧倒的な強さで制し、スーパープリンスリーグ九州はBパートを無敗で優勝。FW半代将都(3年)、宮原愛輝(3年)は全国レベルのアタッカーで、脇を固めるMF森田大智(2年)やMF大島清(3年)も能力が高い。個々の実力に加え、チームとしての完成度も抜群。県外の関係者からも高い評価を得ており、付け入る隙はないかと思われていた。しかし、準決勝でまさかの敗戦。0−0のPK負けで相手の倍となる14本のシュートを放ちながら、最後まで牙城を崩せなかった。

 その大津に土を付けたのが、熊本県リーグ1部に籍を置くルーテル学院だ。選手権には4回しか出場していないが、2010年に過去最高のベスト8に進出。プロにも多くの選手を輩出しており、三原雅俊(柏)はボランチとして長きに渡って活躍している。近年は大津に加え、熊本国府や秀岳館などが県内で躍進。全国舞台に顔を出せていなかったが、今大会は勝負強さを見せて頂点に立った。

 プロの道に進むような逸材や圧倒的な個人技で勝負できるタレントはいない。なぜ、ルーテル学院は勝ち上がれたのか。ポイントは今大会の予選にあった。

「新人戦もベスト8で負け、インターハイ代替開催となった大会も熊本国府にボールを握られて終盤の2失点で逆転負け。これはどうしようかなと思わされた。大津は近年のチームと比べても最強。(新型コロナウイルスの影響で活動を自粛していたので)コンディションを考えて練習を抑えたりもしたし、逆にがむしゃらに練習をさせて怪我をしたりもした。監督に就任して12年目。一番手応えがない年だった」

 こう話すのはチームを率いる小野秀二郎監督だ。3月以降は他のチームと同じように全体でトレーニングが行なえず、寮生は実家に帰した。活動が再開した6月初旬までは子供たちを指導できず、自粛中のトレーニングも子供たちの意向に任せる形に。再開後は公式戦が少なく、チーム作りやコンディション調整が今までにないほど難航した。

 風向きが変わり始めたのは、今予選に入ってから。その戦いぶりがチームに変化をもたらした。
 

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