マンチェスター・Uの「最強ストライカー番付」。歴代のゴールゲッターから選んだ現地記者の1位は?

2020年11月21日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

クラブを根本から変えたカントナ

カントナ(左上)、ルーニー(右上)、ファン・ニステルローイ(左下)、ヒューズ(右下)は、「赤い悪魔」を代表する名ストライカーたちだ。写真:Getty Images

【現地記者選定のマンチェスター・U最強ストライカー番付TOP10(1990年以降)】
1位:エリック・カントナ(元フランス代表)
2位:ウェイン・ルーニー(元イングランド代表)
3位:ルート・ファン・ニステルローイ(元オランダ代表)
4位:マーク・ヒューズ(元ウェールズ代表)
5位:オレ・グンナー・スールシャール(ノルウェー代表)
6位:ドワイト・ヨーク(元トリニダード・トバゴ代表)
7位:アンディ・コール(元イングランド代表)
8位:カルロス・テベス(元アルゼンチン代表)
9位:ロビン・ファン・ペルシ(元オランダ代表)
10位:テディ・シェリンガム(元イングランド代表)

 ゴールの数だけを見れば、ルーニーが傑出している。在籍13年で奪った253ゴールは、クラブ歴代最多だ。5年間で82ゴールのカントナは、その足元にも及ばない。しかし、クラブに何を残したのか、その功績を考えたとき、両者の立場は逆転する。

 ユナイテッドというクラブを根本から変えたのがカントナだった。92年11月、オールド・トラフォードに降り立ったフランスの鬼才は、それまで25年間リーグ優勝がなかった悩める名門を救い出し、復活へと導いた。カントナとともにチームは4度のプレミアリーグ優勝と二度のFAカップ優勝を果たしている。

 カントナは重要なゴールをいくつも決め、ため息を誘う美しいゴールも繰り返し決めてみせたが、ゴール(を決めること)は彼の偉大なクオリティーのほんの一部でしかない。真骨頂はむしろ、ゴールを生み出すクリエイティビティー、天才的な閃きだった。そしてその根底にあったのが、傑出したパーソナリティー、強烈なカリスマ性だ。90年代後半以降のユナイテッドの栄光は、カントナというカリスマの存在がなければなかっただろう。

 このカントナの功績には及ばないとはいえ、純粋にピッチ上で果たした貢献ではルーニーも負けてはいない。前述のように253ゴールを挙げたクラブの歴代得点王は、08年のチャンピオンズ・リーグ(CL)優勝を含む16のタイトルをもたらした。CLに加え、ヨーロッパリーグ(17年)にクラブワールドカップ(08年)と3つの国際タイトルが燦然と輝く。これはカントナにはない勲章だ。
 
 ファン・ニステルローイは、この30 年間で最も優秀な点取り屋だった。ただ、彼は良くも悪くもストライカーとしての自我が強く、しばしばチームプレーを忘れて本能の赴くままゴールへと向かった。ファーガソン監督が一時期、チームの一部として機能するサハのほうに信頼を置いていたのはそのためだ。このオールラウンダーは、怪我さえなければトップ10に入る活躍を見せていたはずだ。

 泥臭く身体ごとゴールに突っ込んでいくそんなCFらしいCFだったのが、〝スパーキー〞ヒューズだ。華麗なカントナとは完璧な補完関係にあり、90年代のプレミアを席巻した。

 カントナとヒューズに取って代わり、歴史的なトレブル(98-99シーズン)を頂点とする黄金期に躍動したのが、コール、ヨーク、そしてスールシャールだ。プレースタイルも風貌も似た者同士のコールとヨークは阿吽の呼吸で連動。スールシャールは研ぎ澄まされた嗅覚で千金弾を連発した。なかでも歴史に刻まれた伝説のゴールが、トレブルの最後の1冠をもたらした、99年CL決勝における後半追加タイムの〝ウイニングゴール〞だ。

 その前に同点弾を叩き込んだシェリンガムは、在籍4年とは思えない強い印象を残している。テベスとファン・ペルシも同じように短期間で大きなインパクトを放った。

 楽しみなのは、スールシャールが監督として直接指導するラッシュフォード、マルシアル、グリーンウッドのこれからの成長だ。2年弱でいずれも長足の進歩を遂げている。


文●オリバー・ケイ(ジ・アスレティック)
翻訳●松野敏史
※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年11月5日号から転載
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